「事故物件」、知らずに契約しないための知恵 プロが教える見抜き方と業界慣行の抜け道
定期借家契約などで、更新を2年などに定めて、1人目を追い出し、2人目からは、通常の家賃に戻すというケースだ。場合によっては、先に少し述べたように会社の社員を数カ月住まわせてその後、何事もなかったかのように貸し出す業者も中にはいるという。ほかにも、家賃が相場よりも安い物件も、事故物件の可能性が高い。
ただし、これらの項目が当てはまるからといって、当然ながら必ずしも事故物件であるとはいえない。事故物件が平気な人もいるが、敬遠したい人も少なくないだろう。そういう人たちにとっては、賃貸物件の一般的な慣習とされる1人目だろうが、2人目だろうが、きっと関係ないだろう。何を“瑕疵(かし)”とするかは個人の考え方によるのではないか。
しかし、賃貸の場合、事故物件の告知義務は1人目のみで、2人目以降は告知しなくてよいというのが通例になっている。
そもそも賃貸物件においての事故物件の1人目告知という通例は、いつ頃できたのだろうか。大島てる氏によると、そもそもこの1人目告知が不動産業界で通例になったのは、東京都内のアパートで、自殺した借り主の連帯保証人に対して損害賠償請求を行った裁判だ。
東京地裁は、この裁判で「1人目の賃借人には告知しなければいけないが、その賃借人が退去したら、次の入居者に対して告知する義務はない」という判決を下した。それに基づいて賠償請求が認められたわけだ。これは、そもそも連帯保証人である遺族が、過重な負担を負わないためだと考えられる。しかし、この裁判が元となり、不動産業界には「事故物件はその後に借りる1人目へは告知すること」の通例が生まれた。
ちなみに、「これはあくまで業界の慣行であって、裁判で争ってその理屈が通用するかどうかは別問題だ」と大島てる氏は語っている。つまり今後の裁判によっては、この1人目告知の慣行が覆される可能性があるのだ。
事故物件の裁判からわかること
しかし、事故物件であることを知らずに借りてしまったり、買ってしまったりしたらどうすればいいのだろうか。また、仲介業者さえもその事実を知らずに、物件を売買して、後でその事実を知ってしまったら……?
実は、事故物件において、告知義務を怠ったために、宅建業者が損害賠償請求をされるケースが過去にはある。いわゆる心理的瑕疵の物件をめぐる裁判である。
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