「たばこ休憩」を不公平と思う人に欠けた視点 法律や働き方改革の面から考察してみた

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接客業や製造業など、お客様への対応や、工場全体の生産ラインを効率的に動かさなければならないという合理的な理由がある職種では、「業務時間中は自分の持ち場を離れてはならない」という就業規則は意味があります。

しかし、たとえばスマートフォンのゲームを開発する会社において、全員が整然とデスクに向かうことと、良いゲームが開発されることには、合理的な関連性があると考えることは難しいでしょう。コーヒーを飲むのもたばこを吸うのも本人の判断に任せ、休憩の回数で人事評価を決めるのではなく、アウトプットの量や質で評価したほうが、伸び伸びと働くことができ、良い製品が生まれてくるのではないでしょうか。

「残業をたくさんしている人が頑張っている」という考え方が正しくないということはすでに多くの人が気づいていますが、それと同様「机に座っていれば仕事をしている」という考え方もつねに正しいとは限りません。机に座って1通のメールを打つのに何十分も時間をかけている社員よりも、たばこを吸いながらでもスマホ片手にテキパキとメールを返信している社員のほうが、仕事ができる社員であると評価することもできます。

自席でたばこを吸っていた時代

さて、数十年前に時代をさかのぼりますと、当時はオフィスの自席でたばこを吸うことが許容されていた時代でした。社員のデスクには灰皿が置かれ、コーヒーを飲みながら仕事をする感覚で、たばこを吸いながら仕事をすることに何の問題もありませんでした。

それが分煙化や健康志向の流れから、オフィス内での喫煙が禁止され、喫煙所が設置されたり、屋外の喫煙スペースにたばこを吸いに行かなければならない時代になったわけです。もちろん、受動喫煙などは望ましくないことですから、オフィスの分煙化が進んだことは社員の健康管理の観点からも非常に良いことです。

しかし、このように過去の時代からの流れで見ていくと、喫煙者が非喫煙者の健康や環境に配慮して、それまで許されていたオフィス内での喫煙をやめて、喫煙所や屋外で吸うというルールを受け入れたという歴史があるわけですから、自席を離れてたばこを吸いに行くことは、単なるサボりではなく、もう少しおおらかに受け止めても良いのかもしれません。

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