「たばこ休憩」を不公平と思う人に欠けた視点 法律や働き方改革の面から考察してみた

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さらに言えば、現在は、喫煙か非喫煙かという局地戦でなく、働き方全体の多様化が進んでいる時代です。フレックスタイム制、裁量労働制、2019年4月から新たに加わる高度プロフェッショナル制度など、社員側に自由な働き方を認める制度だけでもさまざまなものがあります。

各制度によって特徴に差はありますが、大きくいえば、始業時刻や終業時刻、1日の労働時間を社員本人の判断に委ね、自由な働き方を認めると同時に、労働時間ではなく成果によって社員を評価するという考え方に基づいた制度です。

とするならば、少なくとも上記のような制度が適用されている社員に関しては、1日何時間働くかとか、どのように仕事をするのかが法的に社員に委ねられているにもかかわらず、単にたばこ休憩が多いことで評価を下げたり、ましてや懲戒処分をしたりするということは、適用されている制度の趣旨とも矛盾が生じてしまうということになります。

アウトプットで判断する

ダラダラとたばこ休憩をしていることが成果に結び付いていないのであれば、「たばこばっかり吸ってサボっているから仕事ができてないんだよ!」と頭ごなしに叱責するよりも「裁量労働制だから仕事のやり方は任せているけど、もっと効率的に仕事をしないと、評価はどんどん下がるよ。たとえば、たばこ休憩とかも多すぎるんじゃないかな」と、アウトプットの少なさを指摘し、改善を促すほうが本人も本質的な問題点に気がつくのではないでしょうか。

逆に、一見たばこ休憩が多いように見えても、たとえば、55分間驚異的に集中して、5分間たばこを吸って気分転換し、また55分仕事をするというのが本人にとって最適のリズムで、会社が求める以上の成果を出してくれているならば何の問題もないはずです。

このように、たばこ休憩自体は、必ずしも法的な意味で「休憩」とは言えないことと、たばこ休憩の多さとその人のアウトプットの質が比例するわけでもありません。

一律にたばこ休憩を目の敵にしたり禁止したりするのではなく、業種や職種に応じて合理的な基準を設定したり、アウトプットに注目したりすることで、喫煙者にとっても非喫煙者にとっても働きやすく、公平な職場環境が構築されるはずです。

たばこ休憩に焦点を当てましたが、最後に総括的なことを申し上げれば、必ずしも「机に向かっている=仕事をしている」ではありません。アウトプットで評価をする仕組みや社風を構築し、その人の生活環境や嗜好に合った多様な働き方を認めていくことで、多様な人材を引きつけ、そこから新しいビジネスやイノベーションが生まれることにもつながっていくのではないでしょうか。

榊 裕葵 社会保険労務士、CFP

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さかき ゆうき / Yuki Sakaki

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。会社員時代の経験も生かしながら、経営分析に強い社労士として顧問先の支援や執筆活動に従事している。

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