ブラジル「差別発言大統領」が支持される事情 ブラジルのトランプ、ボルソナロ新大統領

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実際、その発言はさまざまなハレーションを引き起こしている。同性愛者嫌いと女性蔑視の差別発言をしてきたことから、ブラジル在住で同性愛者のアメリカ人記者には、「民主主義の世界で選ばれた最も女性嫌悪の公職者」と呼ばれ、大統領戦中には暴漢に刺された。当初、命には別状がないと発表されたが、治療にあたった医者によると実際は命にかかわるほど傷が深かったらしい。

同氏が大統領になることでブラジルは右傾化し、軍政時代に戻ることを心配する人も少なくない。こうした中、大統領戦中にはブラジル全国の州都ばかりか世界各地の都市で、「Ele nao(彼はノ―だ)」というスローガンが掲げられ、数十万人の反ボルソナロ運動が巻き起こったほどだ。

PTによる政権運営はもうこりごり

そんな人物がなぜ大統領選で勝てたのだろうか。選挙では、ボルソナロ氏が極右で支持者は主に高所得者層、アダジ氏が左翼で支持者は低所得者層と見られていた。これまで、PTは低所得者層に対して生活扶助制度「ボルサ・ファミリア」などの福祉政策を行ってきたことから、低所得者層に絶大な人気があった。実際、今回の選挙でも低所得者層が多い北東部のすべての州で労働党のアダジ氏が勝利している。

ブラジルは低所得者が高所得者に比べて圧倒的に多いほか、ボルソナロ氏を嫌う女性や同性愛者も少なくないため、普通に考えればバダジ氏が勝利したはず。それにもかかわらず、ボルソナロ氏が勝利した理由がわからなかった。そこで、選挙後、無作為に選んだ人々40人に、誰に投票したか、そして、その理由を尋ねてみた。

すると、8割がボルソナロ氏に投票し、その理由として「そろそろ新しいブラジルになるべきだ。PTはもうたくさん」「汚職贈賄にはうんざり」「治安の良化を欲する」と、皆ほぼ同じような答えが返ってきた。多くの国民は、政治家の巨額な汚職贈賄・マネーロンダリングなど不正にうんざりし、悪化する景気、治安に疲弊し辟易していたのである。

今回の下院選に、大統領を罷免されたジルマ元大統領がリオ・グランデ・ド・スル州から出馬した。当初その知名度から当選を確実視されていたが、その結果は落選であった。このことからも、いかに労働党が国民に信頼・人気がなくなっているかがわかる。

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