僕が市川海老蔵さんと交わした「悪魔の契約」 『利休にたずねよ』森田大児プロデューサーに聞く

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素人が映画をプロデュースするという一大事

――今、振り返ると、大変なことをしたなと思うのではないでしょうか?

森田大児 もりた・おおじ 1982年大阪生まれ。同志社大学在学中の2003年に、東映京都撮影所でインターンシップを経験後、大学卒業後の2005年に東映に入社。東映関西支社の映画営業室に配属される。2013年6月に東京本社企画部に異動。本作『利休にたずねよ』が彼にとって初プロデュース作となる。

僕は素人でプロデューサーになってしまったのですが、それでも現場のために何とかしたいと思う一心で取った行動です。僕には本物のお茶碗を借りてくることしかできなかったのですから。でも、いまだによくうなされますね。本物のお茶碗に事故があったのではないかと。映画の中で「なぜ人はこうもお茶に魅了されるのか」「それはお茶が人を殺すからでしょう」といったセリフがあるのですが、本当にあのままずっとやっていたら死んでしまうだろうなと思います。やはり当時は必死すぎて、狂っていたのかもしれません。お茶椀を借りなきゃ、生きて帰れないぐらいの気持ちがあったので。今考えると恐ろしいです。あんなこともうできないだろうなと思っています。

――来年、東映さんがギリシャの巨匠、テオ・アンゲロプロス監督の遺作となる『エレニの帰郷』を配給するにあたり、岡田社長は「娯楽の東映から芸術の東映になると」と冗談交じりに話していましたが。

すいません。今まで『利休』のことばかり考えていたんで、『エレニ』のことはまったく考えていませんでした(笑)。かつて東宝さんと松竹さんは、利休を題材とした映画を作ったことがあるのです。東宝さんは哲学的な利休で、松竹は文芸的な利休でした。今回は一見、本格派に見えるかもしれませんが、テーマとしてはいちばん娯楽要素の強い利休だと思うのです。結局、利休の美しさの原点には恋があったという話なので。そういう意味では一応、東映らしい映画なのかなと思っています。

(撮影:梅谷秀司)

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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