路面電車の弱点「運賃支払い時間」は解消可能 ICカードを使った「セルフ乗車」のすすめ

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20世紀末からわが国の路面電車にも外国設計や国産の低床車両が多数就役している。鹿児島市電の2車体連接の国産低床車7500形は、メンテナンス性が良く走行特性に優れている従来タイプの走行装置を低床車用にアレンジして活用しており、また、使用線区の輸送需要に応じて4車体(車両全長27m)や6車体(同39m)、8車体(同51m)といった定員数の多い大型車両の製作が可能であるなどの設計コンセプトが注目された。現行の運賃収受方式のままでは、このような定員の大きな車両は使えないが、セルフ乗車ならこの設計コンセプトが有効となる。

鹿児島市電に使われる7500形。定員数の多い大型車両も製作可能な設計コンセプトだ(筆者撮影)

欧米では長さが30~40m、定員200~260人という大型車両の頻繁運転によって1時間あたり片方向の輸送力が5000人を超える線区はザラにある。線路、架線、変電所などに費用がかかる路面電車は、大きな車両を用いて単位輸送力を向上し乗客1人当たりの輸送コストをバス以下にしなければ路面電車を選択する意味がない。

車両が大きければベビーカーや車椅子用のスペースが十分に確保できて、低床車両投入の効果が得られる。路面電車の市街地入口の停留所でのパーク・アンド・ライドやバス・アンド・ライドにも大形車両だからこそ対応できて、中心市街地へのマイカーとバスの流入を抑制し、良好な都市環境を維持することができる。

MaaSへの対応にも効果的

今、フィンランド発祥のMaaS(Mobility as a Service)という考え方が話題になっている。その概念は「自動車、バス、電車などのモビリティー・サービスをシームレスにつなぐことによって提供される便利で快適な移動」であり、この考え方をベースにしたモビリティー・サービスの提供がヨーロッパで始まっている。このモビリティー・サービスの提供は、利用者への利便性の提供だけではなく、公共交通機関に利用者を誘導して人の移動の効率化や都市環境の改善も狙っており、現在の交通体系を一変させる可能性を有する。わが国でもMaaSの考え方は注目されている。

しかし、公共交通機関に利用者を誘導しようにも、利便性と快適性が低い乗り物はMaaSにはなじまない。 わが国の都市路面公共交通(路面電車とバス)の明日のためにセルフ乗車の普及は必須だ。

柚原 誠 技術士(機械部門)

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ゆはら まこと / Makoto Yuhara

1943年生まれ。岐阜大学工学部卒業。名古屋鉄道入社。鉄軌道車両の新造、改造、保守業務に従事。運転保安部長、交通事業本部副本部長、代表取締役副社長・鉄道事業本部長・安全統括管理者を経て2009年退任。この間に「人に優しい次世代ライトレール・システムの開発研究に関する検討会」に委員として参画。鉄道友の会副会長。技術士(機械部門)。

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