路面電車の弱点「運賃支払い時間」は解消可能 ICカードを使った「セルフ乗車」のすすめ

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今まで、富山ライトレールと福岡市のBRTバスが無人の後ろの扉でのセルフ乗車を導入していたが、さらに、わが国の路面電車の近代化をリードする広島電鉄も2018年5月10日から同様の扱いを市内線の1000形で開始した。この3社の運賃収受の基本はいずれも後ろ扉から乗車して前扉から降車する際に運転士に運賃を支払う方式だが、ICカード乗車券に限り後ろ扉の脇に設置のICカードリーダにタッチしてセルフサービスで運賃を支払って降車できるようにしたものである。

上から富山ライトレール(全長18.4m)、福岡BRTバス(18m)、広島電鉄1000形(18.6m)。↑は乗車、↓は降車。いずれも後ろ乗り前降りが基本だが、ICカード乗車券に限り、無人の後ろの扉から降車できる、扉脇のカードリーダにタッチしてセルフサービスで運賃を支払う(イラスト:筆者作成)

後ろの扉でICカード乗車券だけという限定的な扱いではあるがセルフ乗車の路面電車、バスが走る都市が富山、福岡、広島の3都市になったことによって利便性を実感する人がますます増え、その口コミが国内に広がるであろう。

そして、2022年3月の開業を目指して建設中の宇都宮ライトレールは、全部の扉にセルフ乗車を導入すると11月13日に公表した。欧米に比べて半世紀遅れ、周回遅れではあるが、わが国にもセルフ乗車導入の確実な流れが見えてきた。わが国のワンマン路面電車・バスは「利便性第一」の時代を迎えようとしている。

西欧では半世紀も前に導入

西欧諸国は路面電車・バスのワンマン運転を始める際に、セルフ乗車を導入した。旅客のセルフサービスによって運賃を支払う方式だ。スイスが1960年代の半ばに始めたもので、すべての扉で乗り降りできる利便性の高さが利用者に支持され、1970年ごろまでに各国に普及し、1980年代からは北アメリカ、フランス、イギリス、その後に東欧諸国、そしてアジアでも香港、台湾で導入された。

1950年代にワンマン運転を始めたわが国では、それまでと同様に乗務員による運賃収受を踏襲することとし、運転士がそれを担った。この方式が今日まで続いている。公共交通といえども収支均衡を旨とするわが国では、運賃の完全収受を第一に考えて、かたくなに「運転士による運賃収受」にこだわってきた。

冒頭に述べた通り、この方式では運賃収受に時間がかかるために定員の多い大型車両は使用できず小型車両による少量輸送に限られる。しかし、現実には18mの路面電車や連接バス、27mもの長さの路面電車がワンマン運転されている。利用者のイライラは募る。

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