路面電車の弱点「運賃支払い時間」は解消可能 ICカードを使った「セルフ乗車」のすすめ

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運賃収受にかかる時間の長さに起因する低い表定速度や20mにも及ぶ車内移動の難儀さは、公共交通利用が敬遠される理由として不足はない。現実には、乗降客の多い停留所には地上での運賃収受要員を派遣し乗降時間の短縮に努めている例があり、不便を感じて利用を敬遠するのは一部の利用者だけかもしれない。しかし、「一部の利用者だけ」の不便だからと切り捨てるのは公共交通のサービスにはなじまない。

富山ライトレールの車両(筆者撮影)

しかも、各国で普及しているセルフ乗車という旅客にとって利便性と快適性の高い方式をわが国では享受できないのはただ事ではない。海外に赴いた際にセルフ乗車の利便性と快適性を実感した人は少なくないはずだ。

セルフ乗車の導入に慎重な意見もある。確かにセルフ乗車は、無札や不正客の乗車を物理的に阻止することはできない。西欧でセルフ乗車が導入された当初から、わが国では「ただ乗り」が可能な方式であることが強調され、「収支均衡第一、確実な運賃収受」とは相容れない方式であると喧伝されてきた。

無賃乗車は防げる

セルフ乗車は、駅がなく、したがって改札機がなく、車上で運賃収受をせざるをえない路面電車、バスの利便性を高める運賃収受方式として半世紀の歴史があり、今やグローバルスタンダードだ。「ただ乗り」の懸念はあるが、「無賃乗車などしない。利便性の高い公共交通を維持するためにセルフ乗車に協力する」という市民の意識がこの方式を支えている。さらにただ乗りを防ぐノウハウは蓄積されている。運賃支払いの動作(ICカードのタッチ)とそのときに発する音の乗客相互の監視、検札係員による抜き打ちの乗車券チェックと不正客からの高額なペナルティー(罰金)の厳正徴収だ。

ペナルティー(罰金)の金額については法制度との関係があり十分な議論が必要だが、そもそも、「わが同胞は(この運賃収受方式が成立しないほどに)ただ乗りをする」という考え方で、議論が前に進まない。こうした考え方が主流であるわが国で、富山ライトレール、福岡BRT、広島電鉄、そして、宇都宮ライトレールの決断は、必ずやわが国の路面電車とバスの明るい未来を切り拓くであろう。

諸外国の都市にならって、国内のいくつかの都市が「路面電車でまちづくり」を構想、計画している。現行の運賃収受方式ではそれは「絵に描いた餅」だが、セルフ乗車の導入によって実現可能になる。

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