米国FRB「パウエルプット」が招く市場の混乱 2009年以降の流動性相場は終わりに近づく
アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が4日、アトランタで開かれたアメリカ経済学会の年次会合でハト派的な発言を行ったことで、株式市場は一息ついた。4日のニューヨークダウ平均株価は前日比746ドル高の2万3433ドルと反騰。7日の日経平均株価も477円上昇し、2万0038円と2万円台を回復した。これまで、四半期ごとに0.25%ポイントずつ利上げし、バランスシートの縮小も予定通りに行うとしてきたパウエル議長が、市場の催促に応えた形だ。
2018年10月以降の株式市場の混乱を受け、パウエル議長は「市場は世界景気を不安視しており、金融政策も柔軟に見直す用意がある」と話し、「インフレ指標が落ち着いていることを踏まえ、辛抱強くいられる」として利上げの休止を示唆した。金融市場が懸念しているFRBのバランスシート縮小についても、「政策目標と対立するなら、変えることに躊躇しない」と述べた。現状のような不安定な相場が続けば3月の利上げは見送られると考えてよいだろう。
経済指標か、それとも株価次第なのか
しかし、このような「パウエルプット」は歓迎すべきことなのだろうか。
2つの点で問題がある。まず、市場とパウエル議長の認識には開きがあり、パウエル議長が市場の期待にそもそも応えられるのか、期待に応えるべきなのか、という問題がある。
パウエル議長は「アメリカの景気は好調が続く軌道にある」としている。実際、4日に発表された12月の雇用統計は良好な内容であり、こうした指標が今後も続けば、3月は見送ったとしても、4月以降は再び利上げ路線に戻る可能性がある。パウエル議長は利上げを停止すると言ったわけではなく、また、QT(quantitative tightening、量的引き締め)を見直すと断言したわけでもない。
一方、金融市場のほうは景気の減速ないしは悪化を先取りしている。そもそも雇用統計は景気の遅行指標であり、高い水準の雇用改善が続いたときには、景気のピークを打つことが多い。12月の中国の製造業PMI(購買担当者景況指数)の50割れや米国のISM製造業景況指数の急速な悪化などの先行的な指標によって、市場の不安が掻き立てられている。アメリカFF金利の先物はすでに2019年の利上げ見送りと、2020年の利下げすら織り込んでいる。
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