「リスクオフの円買い」はもうなくなったのか

「いつドル安円高に動くのか」の疑問に答える

ドル円はいつ大きく動くのか(写真:ロイター/Shohei Miyano)

10月に入り、アメリカ株の下落、およびこれに付随する世界の株式市場の調整が続いている。依然として値が落ち切らないので明るい見通しを維持する論者も少なくないが、「高値波乱含み」は典型的なバブル末期の症状である。しかも、株が売られたときにこれといった取引材料が喧伝されることはなく、漠とした不安が市場全体を覆っているように感じられる。

こうした中、為替市場参加者としては、これほど株価が値を下げているのに円高・ドル安傾向がさほど強まっていないことがどうしても目につく。10月に入ってからの株価急落でニューヨークダウ平均株価やS&P500指数は一時、年初来の上げ幅をすべて吐き出すまでに至ったのだが、現時点ではドル円は結局111.60円台までしか値を下げていない。

海外の当局者や投資家も大いに注目している

最近、「リスクオフ(回避)の円買い」、「安全資産としての円買い」の勢いがかつてより衰えているのではないかとの指摘をよく目にするが、まさに10月に入ってからのドル円の動きはそれを裏づけているようにも見受けられる。筆者は今月、出張して海外金融当局者などと面談を行ったが、この論点についての関心はやはり高かった。もはや「アメリカの景気拡大は極みに達した」という前提を多くの市場参加者が共有しており、その先の取引戦略を立てる上で「安全資産としての円」を信じるべきかが大きな問題になっているのだ。

今後、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げに応じてアメリカの景気が減速し株価の本格的な調整が進む局面に入ったとしても、かつてほど円が選好されないならば、その代替としてユーロやポンドといった欧州通貨への関心が相対的に高まることになる。もしくは売られ過ぎた新興国通貨が買い戻されるのか。経済の端境期だからこそ、「安全資産としての円」を信じるかどうかというのは重要なポイントになってくる。

結論から言えば、「安全資産としての円」はまだ生きている、というのが筆者の基本認識である。足元でその実力が発揮されないのはそれに相応しい状況になっていないからだ。円に備わるファンダメンタルズ(端的には世界最大の対外純資産や特異な資金循環構造に支えられた国債の内部消化構造)が変わったわけではない。

現状、円買いが進まない理由としては、短期的および中長期的に2つの理由が考えられる。後者は中長期的であると同時に構造的な要因として紹介する論点である。

次ページまだ大きな調整の時期に至っていない
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