アメリカは為替でも中国に特別の敵意を示す 「為替報告書」の中の中国・日本・ドイツの扱い
10月17日、アメリカ財務省から半期に1度となる「為替政策報告書」が公表された。今回も為替操作国に認定された国はなかったが、中国を筆頭に日本、韓国、インド、ドイツ、スイスといった、従前と変わらない6カ国が監視リストに指定された。リスト掲載国への具体的な制裁は伴わないが、今後6カ月かけて再び審査する対象ということになる。その中で日本やドイツ(ユーロ圏)は通商交渉に挑まねばならない。
2016年4月に掲載が始まった監視リストは中国・日本・韓国・ドイツの4カ国がオリジナルメンバーとして名を連ねており、実際、この4カ国はドナルド・トランプ政権の批判の矛先として常連である。改めて監視リスト入りの基準を確認しておくと、①対米貿易黒字が年間200億ドル以上ある、②経常黒字がGDP(国内総生産)比で3%以上ある、③一方的かつ継続的な外貨買い為替介入を12カ月間でGDP比2%以上行った――のうち、2つを満たすと「監視リスト」、3つを満たすと「為替操作国」として認定されることになる。
元安相場は腹に据えかねたアメリカ
なお、これまで中国は条件を、①しか満たしていないが「米国の貿易赤字において巨大かつ不相応なシェアを占めている」ということを理由に監視リストに掲載されてきた。トランプ政権の通貨・通商政策の評価軸があくまで「対米貿易黒字の大きさ」であることを裏づける動きだったが、今回の報告書の構成は、こうした中国への照準がよりはっきりしたものになっている。
というのも、前回の報告書までは「Executive Summary」(大要)の中の『Treasury Assessments of Major Trading Partners』(主要な貿易相手国への評価)のとの小見出しにおいて、中国や日本、ドイツなどへ監視リスト掲載国への意見が表明されていた。しかし、今回は「Executive Summary」の中で『Treasury Conclusions Related to China』(中国に関する結論)と『Treasury Conclusions Related to Other Major Trading Partners』が別立てに設けられており、監視リスト掲載国の中でも中国の取り扱いだけは特別となっている。
直前までトランプ大統領が中国の為替操作国認定を要求していたという報道があり、それゆえに報告書の公表が遅れたという推測まで出ているほどなので、こうした報告書の構成変化に違和感はない。監視リストは為替操作国認定の一歩手前とされるが、リスト掲載国の中でも中国が抜きん出たことを示したと考えられる。
具体的に『Treasury Conclusions Related to China』には何が記述されていたのか。
前回までは「米国の貿易赤字において巨大かつ不相応なシェアを占めている」ことが中国向けの記述として見られた(だが、それとて中国を名指ししていたわけではなかった)。この記述は今回の報告書でも残っている。
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