2019年にもう一度大きな暴落がやって来る 今は「静かなバブル崩壊」が続いているだけだ

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総合すると、一般メディアも市場関係者も、暴落の原因はトランプ大統領とFRBにあると非難しているが、これは全くの間違いだ。その証左は、12月26日にアメリカの株価が暴騰したことだ。26日にトランプ大統領の何が変わったか?FRBの姿勢に変化はあったのか?そんなニュースは一つもない。貿易戦争はすぐに大きく動くはずもない。

何もないのに株価は急激に回復した。暴騰した。これは何を意味するのか?この乱高下は、マーケットセンチメントが非常に怯えた状態になっているということを示しているということだ。

投資家たちが怯えていれば短期の仕掛けにもなすすべなく、恐怖から投売りをするか、怯えて凍り付いているしかない。だから、連日の下げになすすべもなく暴落が続いた。押し目買いの動きなどほとんどなく、反発の気配もなかった。

その一方で、反発の気配も全くなく、誰も買わなかったのに急激に反発した。それは一部のヘッジファンドしか買い上げた主体がいなかったのだ。マーケットが薄いから少しの買いで一気に上げることができる。下げたときは売りを膨らませ、段階的に買い戻しては売りを繰り返した。だから、朝方は少し反発して始まって、後場から大きく下げるということが繰り返されたのだ。

しかし、26日の回復は一気だった。象徴的なのは、アメリカ市場ではなく、日本市場だ。日経平均株価は朝方大幅反発で始まったのが、前場の後半から上げ幅を縮小していき、一時的にはマイナスにもなった。だがそこから引け際だけで先物は約400円も急回復したのだ。チャートの様相は異常で、少しの取引で一気に戻した。売りのときは枚数を膨らまし、鞘を少しずつ抜きながら利益を膨らませ、買い戻しのときは自作自演で損は出るが取引量は少ないので、利益の一部しか相殺されない。この異常な短時間の反発こそが、仕掛けであることを明確に物語っていると同時に、相場心理が弱気に傾いていることを表している。

もう一度必ず「仕掛け」が来て「成立する」はずだ

この一連の動きに対し、強気派たちは(要はマーケット関係者)、全員といっていいほど、「下げたのがそもそもの間違いで、取引がクリスマスで薄くなっているところへ、今年儲かっていないヘッジファンドが小遣い稼ぎのために暴れただけだ」、と偉そうに解説するだろう。

しかし、それは間違っている。ヘッジファンドの仕掛けが成功するということは、しかも暴落の仕掛けが成功するということは、あるいは暴落で仕掛けようとするということは、相場の心理が非常に弱っており、びくついているからなのだ。相場の心理が健全なら、そんな仕掛けは跳ね返されてしまうし、わざわざ損するリスクがあるような仕掛けはしない。

逆に、暴騰することもおかしい。普通なら心理が弱っているから戻してくれば安心してしまい、ナイーブな投資家なら買いをいれたりできない。恐怖は残ったまま、いや、むしろ一度暴落を目の当たりにし、さらに弱っているはずだ。結局大きく戻したのは、もう一度仕掛けるときに下落幅を確保しておくためのもので、暴落をむしろ仕掛けやすいのだ。したがって、もう一度同じ仕掛けが来る。成立する。

私は、今後、全体としては下落方向に向かいつつ、株価の乱高下が継続すると予想する。相場心理は何も改善していない。相場の恐怖はまだまだ続くのだ。これは静かなバブル崩壊局面の中の乱高下なのだ。

小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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