2019年激動の市場でも投資機会は十分にある 世界の成長鈍化と重要なリスクに備える

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2014年は4兆ドル近くあった中国の外貨準備高は1年半ほどで約3兆ドルと、日本円に換算して100兆円以上が流出していた。UBSでは外貨準備額が2.5兆ドルを下回ると為替を十分にコントロールできなくなるリスクが高まるとみている。

こういった中国リスクが顕在化してくる場合には、2015~2016年同様にグローバルな景気後退の懸念も起こりやすく、投資戦略としても金などのコモディティや長期の債券などの投資を拡大させていくことが望ましい。通貨としては安全通貨とみられている日本円やスイスフランが上昇しやすくなろう。

株式のグローバル分散投資と下落への対策

このように、2019年も厳しい市場環境が続くとみられるが、投資機会は存在する。世界経済が景気後退に陥る可能性は依然低いとみており、現状の株価は十分に割安な水準である。株式については十分にグローバルに分散されたかたちで保有し続けるべきだろう。

同時に、人口増加や高齢化、都市化といった長期トレンドに関与している企業の収益は堅調な伸びが持続しやすく、医療機器や宇宙ビジネス、キャッシュレス化の進展など、消費・企業行動の構造変化を捉えた投資テーマにも注力すべきタイミングと考える。

一方、株価の急変に備えた防衛策も必要だ。株式であれば、アメリカ株式のバイライト戦略(原資産の買いとコールオプションの売りを並行して行うこと)やプットオプションの購入、また債券であれば、デフォルト率に比して割安な水準である欧州やアジアのハイイールド債、6~7%程度の利回りが期待できる新興国債券(米ドル建て)を組み入れていくことだ。市場の変動率が高い状態が続く中、ヘッジファンドなどの代替投資(オルタナティブ)も推奨している。

為替市場では2018年はドル買い、ユーロ・新興国通貨売りの構図であった。一時的な過度の変動リスクは残るものの、景気後退には陥らない中では、ドル円は1ドル=110円程度が底値で、これを割り込む円高ドル安にはなりにくいだろう。また、新興国通貨は変動が大きい状況が続くが、カナダドルや豪ドルなどの先進国通貨も購入するタイミングを探るべきだろう。

青木 大樹 UBS 証券チーフ・インベストメント・オフィサー

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あおき だいじゅ / Daiju Aoki

2016年11月より、UBSウェルス・マネジメント、チーフ・インベストメント・オフィス、日本におけるチーフ・インベストメント・オフィサー(CIO:最高投資責任者)兼日本経済担当チーフエコノミスト。2010年8月、UBS証券会社(現UBS証券株式会社)に入社後、インベストメント・バンク、ウェルス・マネジメントにて経済調査、外国為替を担当。2001~2010年までの9年間、内閣府にて政策企画・経済調査に携わり、骨太の方針の策定や経済財政の見通し・影響・分析などを担当。2006~2007年の安倍政権時には、政権の中核にて「骨太の方針」の策定など政策企画を担当した。ブラウン大学大学院にて経済学修士号取得。

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