2019年トランプを待ち受ける3つの「超難所」 正念場は年明け早々にやってくる

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第2は司法妨害であり、コミ―FBI(連邦捜査局)長官(当時)の解任等が論点である。第3は、選挙資金法の違反であり、トランプ大統領に不利な情報を隠すために、口止め料が払われたとされる案件が問われている。

疑惑の捜査に関しては、トランプ大統領が対峙する相手は3方に分かれる。第1は、いうまでもなくモラー特別検察官である。「ロシア疑惑」や司法妨害は、特別検察官による捜査の範疇である。第2は、連邦検察だ。選挙資金法の違反については、特別検察官ではなく、ニューヨークの連邦検察が中心となって捜査を進めている。

トランプ大統領が対峙しなければならない3つ目の難所は、アメリカ議会である。特別検察官が捜査に関する報告書を発表すれば、焦点は議会による弾劾手続きの有無に移る。確かな証拠が明らかではない現時点では、民主党の指導部は弾劾手続きには慎重だが、支持者には弾劾を求める機運が強いのも事実である。報告書の内容次第では、弾劾への流れが急加速する可能性がある。

トランプ大統領の活路

トランプ大統領にとっては険しい難所ばかりだが、活路になりそうな材料はある。

財政運営については、民主党に歩み寄らなければならない論点は、それほど深刻ではない。たとえば、2020年度に想定される緊縮財政の規模は、2012年度に懸念された大増税とは比較にならないほど小さい。

前回のねじれ議会の時期には財政再建が急務だったが、現在のアメリカでは財政赤字に対する世論の関心は低く、厳しい削減策が急がれているわけでもない。民主党との間ではメキシコ国境への壁建設費用が争点になっているが、双方が主張する予算額の差は議会が毎年決定する歳出総額の1%にも届かない。

通商政策については、中心となっている米中摩擦において、一定の成果を上げつつある。とくに主戦場となっているハイテク分野では、5Gの調達等で国際的な中国包囲網が形成されてきた。本質的な摩擦解消には遠いにしても、トランプ大統領が気にする貿易不均衡の面で歩み寄ることができれば、表面的には米中摩擦を沈静化させる糸口になりそうだ。

疑惑の捜査に関しては、トランプ大統領にできることは少ない。それでも、民主党が攻めを急ぎ、世論の批判を集める可能性はある。また、弾劾には上院での3分の2の賛成が必要であり、共和党議員が離反しない限り、トランプ大統領は職を追われはしない。

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