青函トンネル、ついに新幹線が「速度向上」へ 春のダイヤ改正で時速160キロ運転が実現へ

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在来線程度の速度ならばさほどの問題にはならない波状摩耗でも、これから速度向上に取り組むにおいては重要な課題となる。そこで改めてレール削正が重視されるようになり、2018年夏以後、本格的に施工されるようになった。

青函トンネル内部。北海道側入り口から約15kmの白符斜坑付近(写真:レイルマンフォトオフィス)

効率の観点からレール更換で対応するケースもあり、9月1日から当面の間、北海道新幹線の一部列車の時刻変更が行われた。変更されたのは上り最終の「はやて100号」新函館北斗発新青森行きで、新函館北斗発を5分、木古内発を2分繰り上げた。このわずかな時間調整により貨物列車の時刻変更が可能になり、従来のダイヤでは2時間30分しか確保できなかった時間帯において、保守間合を4~5時間に拡大することも可能になる。

今回、レール更換の対象とされたのは在来線専用レールで新幹線が利用するものではないが、波状摩耗のある状態では車輪を伝わって反対側の共用レールに悪影響をもたらすこともあるため、更換することとなった。

時速200km化も検討中

なお、共用走行区間の新幹線速度向上については、国土交通省が主催する交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会整備新幹線小委員会のワーキンググループ(WG)で議論されてきた。2019年春のダイヤ改正で時速160km化を図るとともに、時速200km化についても検討が重ねられている。

在来線貨物列車を編成ごと新幹線サイズの貨車に積載して高速化や安定性を確保するトレイン・オン・トレイン案や、上下線間に隔壁を設ける案などは現状では難しいため、まずは現実的な手法として時間帯を区分しての実施が検討されている。すなわち、新幹線の速度を時速200kmレベルに引き上げると、貨物列車とのすれ違い問題はより懸念が高まるため、新幹線と貨物列車をダイヤの調整により混在させないという発想である。

『鉄道ジャーナル』2019年2月号(12月21日発売)。特集は「北海道を旅する」(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

JR貨物のデータに基づくWGなどによるシミュレーションにより、物流への影響から貨物列車の青函トンネル通過を空白にできるのは、ゴールデンウィークやお盆、年末年始期間であり、その特定時期の新幹線始発時間から15時半ごろまでと導き出された。また、そうした調整は下り線が比較的容易であることが導き出されたため、実施の方針案としては上記の期間に下り線において、始発から夕刻ごろまでの間に限定し、時速200kmで運転することとなった。

東京―新函館北斗間所要時間は現行最速の4時間2分を6分(160km/h走行の場合は3分)短縮することができ3時間台に乗せることができる。誤進入防止システムの開発などに左右されるものの、開始時期は遅くとも2020年度と予定されている。また、上り線での実施や時速260kmへの向上、時間帯拡大の可能性についても検討が行われている。

注:12月14日に発表された2019年3月ダイヤ改正の概要では共用区間の時速160km走行により新青森―新函館北斗間で最大4分短縮、東京―新函館北斗間最速3時間58分とされている。
鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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