青函トンネル、ついに新幹線が「速度向上」へ 春のダイヤ改正で時速160キロ運転が実現へ

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整備新幹線である北海道新幹線の最高速度は時速260kmとされているが、共用走行区間では貨物列車とのすれ違い時の安全確保の点から在来線特急列車と同じ最高時速140kmに抑えられ、所要時間が増加している。その分、競争力が減衰し、航空などほかの交通機関に需要が流出している。

青函トンネルを挟む共用区間を走る下り貨物列車。新幹線列車に対し倍の列車本数があり、現状は貨物輸送主体といえる(写真:久保田 敦)

また、在来線専用レールや構造が複雑な三線軌分岐器があり、途中駅や信号場の貨物列車待避線や在来線専用の区間にかかわる経費負担も、従来の制度ではJR北海道に負わされている。三線軌分岐器は言うに及ばず、三線軌そのものも締結装置の数は1.5倍になり、さらに新幹線専用レールと在来線専用レールの間は狭い範囲に多数の部材があるため保守作業がしにくく、わずかな部材のずれでも軌道短絡等の輸送障害につながるおそれがある。

貨車の落下物や脱線で新幹線の線路内に影響が発生したことを自動検知するため、光ケーブルによる限界支障報知装置を設けているが、この装置を冬期の落雪氷もある環境の中でもメンテナンスしてゆかなければならない。

メンテナンスの時間も不足

さらに、新幹線は通常、終電と始発の間に6時間程度の設備保守間合が確保されるが、共用走行区間はより多くのメンテナンスが必要であるにもかかわらず、深夜や未明に多数の貨物列車が走行するため短い作業時間しか確保できない。当然それに合わせた体制が必要になる。JR貨物などと調整し、定期的に作業時間を拡大するなども必要になる。

一方、昨今は青函トンネル本体についての課題も大きくなりつつある。しみ出る海水を汲み上げる排水ポンプや、列車火災対策の装置など、特有の装置が備えられているうえ、トンネル本体も開業から30年を経過し、本坑に先立って建設され、今も換気や排水に使われている先進導坑などは40年以上も経過している。塩分を含む地下水や湿度90%という劣悪な環境があり、そのため設備の更新は必須だ。さらにトンネル本体の老朽化対策も必要になってきた。2014年ごろから、強い地圧により先進導坑の一部で“盤ぶくれ”と呼ばれる変状が認められるようになった。この対策としてロックボルトの打ち込みが施工された。

こうした収益構造の弱さや経費負担増の要因を多く抱える中、資産の維持管理の区分にも課題がある。

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