「株が現金より運用成績悪い」異常が示す予兆

アメリカで「キャッシュ」が魅力的になっている

キャッシュが注目されるのも当然と言っていいだろう。わずか1.7%であっても、確実に入ってくる可能性が高い収益のあるキャッシュは、いつまた暴落するかわからない株式やファンド、コモディティーよりも魅力的と言える。どこに投資してよいかわからない状況――それが現在の投資環境と言っていいだろう。

銀行でさえ「運用難」に直面している日銀の金融政策?

では、日本から見た投資環境はどうなっているのだろうか。

2018年の投資環境が世界的に異常だったことは、さまざまな要素から確かだ。通常の金融市場であれば、株式市場や債券市場が下落した時には、円高やスイスフラン高になって、アメリカドルや新興国通貨は下落する。

実際に、11月末現在の対円での為替レートを見てみると、トルコリラ(-24.2%、過去1年、以下同)を筆頭に、ブラジル・レアル(-14.6%)、ロシア・ルーブル(-12.1%)、スウェーデン・クローナ(-7.2%)と大きく下落。その一方で、上昇したのはニュージーランド・ドル(+1.5%)ぐらいしかない。

ドル円に至っては、この1年間で1ドルあたり10円以下の変動幅しかなかった。これはかなり珍しいことで、ユーロやイギリスポンドもこの1年で大きく動いたとはいえ、5%以下の変動幅しかない。FX(外国為替証拠金取引)市場が低迷だったと言われるのも無理のない話だ。

通常であれば、ドル下落に伴って原油価格や金価格が上昇していくのだが、金価格はここにきてやや値を上げているものの、原油価格は逆に値を下げている。

さらに、ブラジル株やインド株が上昇していても、通貨ではマイナスになっているため、実質的に相殺されてあまり高い運用益は出ていない。少なくとも、日本円ベースで見ると2018年は海外の株式では大きな成果は得られていない、と見ていいだろう。

では、日本は銀行預金や日本国債などで「現金、現金同等物」の成績はどうだったのか。言うまでもないが、日本ではアメリカのような現象が起こる兆しは微塵も見えていない。日本銀行が、相変わらずマイナス金利政策を続けており、株式やETF、REITを購入するなどの量的緩和政策はいまも継続されている。

日本国債に至っては、もはや限界に近い水準まで日銀が買い上げている。地方銀行が、過去に保有していた比較的利回りの高い国債が償還を迎え、買い替えることができずに滞留する資金がすでに4兆円に達するとも報道されている。銀行でさえも、運用難の時代を迎えているわけだ。

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