流行に乗って職場崩壊「危険な人事制度」2選 「AI人事、分散組織」…御社は大丈夫?

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問題1:データが不完全

AI人事はデータが命です。知りたいことに関連しそうな過去のデータをとにかくたくさん集めることから始まります。人事で言えば、「どんな人がどんな成果を出し、どんな評価になったのか」というデータをたくさん集めます(教師データと言ったりします)。それを分析したり、AIが学習したりして、何らかの法則を見つけるわけですが、そもそものデータ集めがかなり大変なのです。

例えば、いちばんわかりやすい採用選考ですらそうです。「採用時評価と入社後評価は相関があるのか」という単純な問題ですら難しいのです。

よく、この問題は「なんと採用評価と入社後評価は相関がなかった!」という結果が発表されたりするのですが、調査方法をみるとやや怪しいものも多いようです。というのも、「採用基準に満たないと評価をした人が、もし入社したらきちんと活躍したのか」というデータと「採用基準に満たしていると評価したが、他社に入社してしまった人がもし自社に入社したとしたら活躍したのか」というデータはありません。

この2つのデータがないのに、「合格と評価した人のうち、入社した人だけ」のデータで相関を測っても、それは十分なデータと本当に言えるのでしょうか。

問題2:現状を再生産してしまう

つい最近、アマゾン社の採用でAI人事を一時凍結するというニュースがありました。AIの選考に女性を差別する傾向があったということでした。

もちろんアマゾン社に差別意識などなく、むしろ逆に女性重視をしていたからこそ、検証を行い、このことが発覚したわけですが、AIの旗手でアマゾン社のAI人事でさえ、まだまだこのレベルということです。本件に関しての内実はわかりませんが、ニュースを基にAIの素人なりに解釈すると、要は教師データに「優秀な男性」が多かったことを学習して、法則化してしまったということでしょうか(そんな単純な理屈かどうかはわかりません)。

データは過去のものです。過去のものをベースにするだけでは、なかなか未来を創造的には絵描けません。さまざまな対策はあるのでしょうが、素朴にAI人事を導入すると、「現状を再生産する」ことになってしまう可能性があるのです。

AIに選考されても納得できない

問題3:意味がわからない

AI人事の最後の根本的な問題は、「意味がわからない」ことです。数学的に法則性が成り立ったとしても、そこを解釈して、何らかの意味を見出すことができなければ、人事で実際に使うことはなかなかやりにくいものです。例えば、マーケティングでの事例で言えば、ある場所に売り場を設置すれば売り上げが上がるということが、たとえ「意味がわからなかった」としても、何度やっても再現性があるのであれば、そうすればよいと思います。

ところが、人事においては、そうはいきません。配属を考える際に、「あなたは、AI分析によれば、関西がいいと出たので、来月から関西に転勤してもらいます」と言われたらどうでしょうか(実際はそんなストレートなことは言わないと思いますが)。実際に行けばAIの言うとおり成果が出るのかもしれませんが、そもそもの最初から意気消沈してしまい、結果、AIの予測虚しく、ローパフォーマーとなり退職してしまうかもしれません。

人間は「意味」の動物です。どれだけ確実な法則であっても、そこに意味を感じることができなければ、モチベーションがわくことはありません。

次ページ効果的な運用にはまだまだ改善と周知が必要
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