流行に乗って職場崩壊「危険な人事制度」2選 「AI人事、分散組織」…御社は大丈夫?
AI人事は、先にも述べたように期待できる領域だと私は思っています。むしろ、これまでの担当者の直感に頼った神秘的な人事よりは、本質的には100倍もいいことだと思います。
ところが、上述のとおり、まだまだ問題は山積みです。AI人事を受ける側にもまだAI人事のよさは浸透していません。新卒採用などで、AIによってエントリーシートや動画面接をするという手法が徐々に出てきていますが、それらがどれだけ精度が高くても、学生の意識ではまだ「AIよりも、人間に選考してほしい」というのが本音でしょう。
AI人事を発展させていくためには、AI人事を実施する側の精進と、受ける側の理解を進めていくことが必要で、それがなければ、AI人事の結果に納得いかない社員によって組織は崩壊してしまうかもしれません。
危険な人事施策その2:自律分散型組織
これも、随分前から似たような概念や事例が出ては消えてきたものですが、「自律分散型組織」「ネットワーク組織」について検討してみます。
これも、私自身は個人的には好きな考え方です。上からいろいろうるさく命令されることなく、社員が自分の思いに自由に従って動くことで、個々人の創造性が発揮されて、世の中に価値あるものを提供できるようになる……たしかに魅力的な、天国のような世界だと思います。ですから、多くの人が「そういう組織があったらなあ」と思うのも無理はありません。
この理想的な組織概念に取り憑かれた経営者や人事担当者は、事業や組織の理念やビジョンを作り、一方で、既存のヒエラルキー、官僚制度的なものを破壊しようとします。ところが、多くの会社ではどうもうまくいっていないようです。なぜ、簡単に「理想の組織」は実現しないのでしょうか。
もっとも根本的な原因は、おそらく多くの人は本当は自由など望んでいるわけではないからではないでしょうか。会社や仕事を通じて何かを実現したいことなど、それほど強いものがない。そういう人が多いのではないでしょうか。
というのも、私が新卒学生や若い転職希望者と話していると、多くの人の悩みが「やりたいことがない」というものだからです。いわゆる「意識高い系」と呼ばれるような、きれいな「やりたいこと」がある人など1割いるかどうか。その他の人は、個別具体的な「やりたいこと」などない。
そういう状況で、「好きにしていいよ」と言われたら、それはむしろ脅迫のようなもので、どうしてよいか戸惑って足が止まるのも無理はありません。しかも、私はそれが悪いとは全然思いません。
彼らは、「誰かの役に立ちたい」という貢献欲求が強い人多い。自分がやりたいことをやりたいのではなく、困っている誰かのためになるようなことをしたい。それのどこがいけないのでしょうか。人は期待に応えようとするもので、誰かのオーダーを必死にこなそうとする。その気持ちを生かすほうが効果的かもしれません。
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