損保会社が自ら「介護事業」まで手がけるワケ

SOMPOホールディングス流「保険と介護」

――提携先を選ぶ基準は?

国立長寿医療研究センターと提携し、彼らの過去の知見をベースにさまざまなアドバイスをいただいています。その中で、これならリスクファクターの削減に寄与するだろうというサービスを持つ企業に入っていただいています。ただし、すべてのプラットフォームは進化していきます。SOMPOと提携するアカデミアの人たちとチェックしながら、当然、入れ替えや追加もあるだろうと思っています。

――「親子のちから」は、親が要介護状態に該当した場合の介護費用を補償する商品ですが、契約企業の従業員が任意で加入するものですね。この商品の開発意図は?

企業の人事や経営企画の人たちと意見交換をしていて、想像以上に従業員の介護離職に悩んでいらっしゃることがわかりました。会社を支えてもらわなければならない年齢になった頃に、親の介護に直面するわけですから。一方、個々の従業員からすれば、せっかく築いたキャリアをあきらめなければいけない。国の介護休業制度とは別に、どのような制度があれば介護離職が防止できるのかといったことを、幅広くディスカッションしてきました。今回はたまたま「親子のちから」という保険につながりましたが、保険とはかかわりなく、このようなご相談が増えています。

東京と大阪に企業内大学

――介護関連サービスについては、奥村さんご自身、介護・ヘルスケア事業のオーナーでいらっしゃるわけですが、オーナーという肩書の意味は?

海外では「君は創業者なのか」と勘違いされるのですが、人事権や経営リソースの分配の権限を委譲されているということです。ただし、結果だけは出しなさいと。

結果というのは、圧倒的品質によるブランドの構築です。認知症の人が社会から孤立するとか、家族と一緒に生活できないとか、尊厳が失われるとか、それらを防ぐために高品質なケアをご提供し、ご本人だけでなくご家族の負担も軽減していくということです。

奥村幹夫(おくむら・みきお)/1989年筑波大学体育専門学群卒、安田火災海上保険入社。2006年フィンテック グローバル入社。2017年より現職(撮影:梅谷秀司)

――高品質のケアを実現するためにどのようなことをしていますか。

われわれも「完全にできています」と胸を張って言える状況ではないのですが、1つはハード面。ウェアラブルをつければ遠隔で、あたかもフェース・トゥ・フェースのようなコミュニケーションがとれるとか、医療が受けられるとか、ドローンを使えば物を届けられるとか、さまざまな技術を使っていく。そういう技術を使いこなしながら、効率的で品質を落とさない介護のモデルを作る。

社員教育のために東京と大阪に企業内大学を作りました。2割くらいが毎年離職する業界ですから、教育投資は無駄だと言われることもあります。しかし、われわれが大きな図体で参入した以上、一定の品質が担保できるように採用と教育は続けなくてはいけない。飛び抜けて優秀な人もいます。一方で「SOMPOブランドならここまでのレベル」という標準化の努力をしているところです。

――利益率の低い訪問介護をカバーされているのが意外です。

私どもが買収した会社から引き継いだものですが、やはり、ご自宅に住み続けたいという人もいらっしゃる。そのときに在宅でサポートしてくれる人がいないと、ご家族が疲弊してしまいます。収益性だけを考えれば、富裕層向けの有料老人ホームがいいのではないかと言われることもあります。しかし、介護事業に参入した以上、さまざまなニーズに応えていくために、歯を食いしばってでもやっていきます。

――介護職の地位向上のために何が必要ですか。

介護職はみんなから感謝される仕事じゃなければいけないと思っています。そのために一定の知識は必要になってくる。ただ、顧客と24時間接していますので、観察能力やコミュニケーション能力など、幅広い能力が求められます。単に大学で知識を詰め込めばいいということではないと思います。気づいたらポットを拭けるとか、心の優しさとか。ただ、それを期待するには一定の余裕がないと無理なので、例えば夜の見守りはセンサーでいいと思っています。これだけ労働環境が厳しい中で、われわれのところだけでも1000人を超える人たちが夜勤をしている。そういったものを少しでも楽にできないだろうかと思うのです。

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