損保会社が自ら「介護事業」まで手がけるワケ SOMPOホールディングス流「保険と介護」

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――それが実現すると育児との両立も可能になってきますね。

介護に携わる人って圧倒的に女性が多いんですが、役員とか部長などの管理職は男性の比率が高くなるんですよ。働き方の問題だとか、管理職に転勤を強いているのではないかといったことを見直していかないと、本当の意味でのダイバーシティなんていうのは実現しないと思います。ただ現状は難しいです。子育て中に夜勤ができないとか、子どもの病気で休むとなれば、誰かが代わらなければいけない。これが続くと職場の中がギスギスして、結局、迷惑をかけるくらいならと離職してしまう。

――プラスアルファの人材が必要ですね。

今の介護給付ではそういう余力のあるところがない。政治に対して介護給付を上げろといっても財源がない。処遇の改善をするためにも、バックアップのための人材を送るためにも、先ほど申し上げたような生産性の向上は、誰が何と言おうとやらなければいけない。やり遂げて、やって見せて、仕組みを変えていかないかぎり、この状態から脱却できないと思っています。

投資リターンとブランド向上は車の両輪

――お話を伺っていると保険が何か脇役というか、ワンオブゼムのように感じてしまいます。SOMPOがやることの意義を教えていただけますか。

保険会社は介護事業に比べると歴史が長いので、信頼感やブランド、顧客基盤が圧倒的にあるわけです。そのブランドを活用して、介護業界で抱えている課題にチャレンジをしていきたい。保険会社で培った顧客基盤を活用しながら、健康寿命の延伸とか、お客様のニーズに応えていく必要があります。単に事故が起こった、保険金を払いますというだけでは、お客様が満足することはもうない。デジタル技術などの新しい技術を使って、お客様の声なき声も含めて、データを収集して補填していくことがグループ全体を通して必要になっていくと思います。その1つがすでにお話しした認知症サポートプログラムです。

「単に保険金を払いますというだけでは、お客様が満足することはもうない」(撮影:梅谷秀司)

――先ほど、介護・ヘルスケア事業のオーナーとして会社から求められているのが、圧倒的品質によるブランドの構築だとおっしゃいましたが、そうはいっても投資家からはリターンを求められると思うのですが。

われわれが株主の方とお約束しているのは、介護業界の利益率の平均値です。在宅もやるし「まあこれで勘弁してください」と。投資リターンはほかの事業に比べて遜色はないと申し上げています。それよりも「SOMPOだと安心」「まずはSOMPOに聞いてみよう」「同じ値段ならSOMPOにしよう」というブランドを作っていく。外国の方からは「日本の社会的課題を解決するのに金を使うな」との意見もいただきますが、一定程度、ご理解をいただいていると思っています。

――今のお話は、投資リターンにブランド価値の向上も含んでるということですか。それとも別々の目標を並立させているという意味ですか。

投資家に対して約束している投資リターンは、最低限の私のミッションです。ただ、それを達成するためにほかのものを犠牲にするのではなく、SOMPOブランドをきちっと高めていくことをやっていく。だから上に乗っているんですね。

投資リターンの達成ができないのに、ブランドの向上なんか絶対できないです。だから介護事業の役員たちにも「理念・理想を言うためには最低限の約束は果たそう」と鼓舞しています。それで初めてわれわれの説明責任が果たせて、言っていることに現実感や信頼性が高まると。投資リターンとブランド向上は車の両輪です。

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