OPEC減産でも原油価格は「暴落」しかねない 1バレル50ドルを大きく割れる可能性も?
OPECの原油供給については、これまでサウジとロシアが協力し、2017年以降の減産を主導してきた。これが奏功し、2016年初めには26ドル割れ目前まで下げていた原油価格は70ドル台を回復した。しかし、トランプ大統領の増産要請圧力に屈し、サウジが供給を増やしたことで原油価格が下落した。
だが、50ドル前後まで下げてしまうと、さすがのサウジも財政面で厳しい状況に追い込まれる。12月6日に開催されるOPEC総会では、当然のように減産を検討する。しかし、これはかなり難しい作業になることだけは確かだ。サウジのエネルギー産業資源鉱物相のハリド・ファリハ氏は、「原油市場を安定させるためにサウジが単独で減産に踏み切ることはない」としている。ファリハ氏は、「OPEC加盟国のすべてが原油市場に安定を取り戻したいと考えており、イラク、ナイジェリア、リビアからは前向きなシグナルが得られた」としている。
さらに「われわれは必要ならどんなこともするつもりだ。ただし、OPECがまとまって行動する場合に限る。サウジだけではできないし、また行わない」と言明している。その一方で、「誰もが市場に安定を取り戻す決定を望んでいる。市場を均衡させるための透明性や全体での決定なしに市場にまかせることは助けにならないという共通認識があると思う」としている。
減産に消極的な非OPECのロシア
市場では、減産を行った場合、日量140万バレル以上の規模になるとみている。一方でロシアはこれまで新たな減産には消極的な姿勢を示している。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は原油相場について、「60ドルなら満足できる水準」とし、「OPECと連絡をとっている。必要に応じて協力して取り組む用意がある」としている。
プーチン氏は以前、70ドルが満足のいく水準としていたが、いまはその水準を切り下げたことになる。これは、ロシアが本音では、減産に協力したくないことを示しているといえる。むしろ、増産して収入を増やしたいと考えているといえる。一方、ファリハ氏は、「原油の供給が潤沢であることから、OPECや他の産油国は2019年に減産を迫られる可能性がある」としている。これだけ立場や見方が異なれば、総会での減産が決まらない可能性も否定できない。
また、サウジには別の問題もある。それが前出の「カショギ氏殺害事件」である。事件の詳細については割愛するが、ジェームズ・マティスアメリカ国防長官は事件に関して、「アメリカはサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の関与を示す明白な証拠を得ていない」としている。また、イエメン内戦に介入するサウジへの支援を継続する重要性を訴えている。カショギ氏殺害やイエメン空爆での民間人犠牲者発生をめぐってサウジ批判が強まる中、トランプ大統領のサウジ擁護の姿勢を正当化したといえる。
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