OPEC減産でも原油価格は「暴落」しかねない 1バレル50ドルを大きく割れる可能性も?

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さらに、株価が不安定になっており、その結果、リスク回避的にドルが買われていることも、ドル建て原油価格の押し上げにつながっている面も見逃せない。これは、2014年7月以降に原油価格が100ドル台から2016年初めに26ドルまで下落したときにもみられた光景だ。いまは市場がリスク回避的になっており、アメリカ国債に資金が流入する中で利回りが頭打ちになっている。本来なら金利の頭打ち感からドル安になってもよいのだが、欧州不安などもあり、ドルが対主要通貨で堅調に推移している。
このような状況では、ドル高が原油価格を押し下げることになる。また、注目したいのは、株価と原油価格の関係である。筆者は世界の株価が今年1月にすでにピークアウトし、下落基調に入っていると考えているが、同時に原油価格もピークを付けたのではないかと考えている。

50ドルを明確に割り込めば5ドル単位での崩落も

歴史的にみると、2000年のハイテクバブル崩壊時には、MSCI世界株価指数がピークアウトして6カ月後に原油価格はピークアウトした。また、2008年のリーマンショック時には、株価のピークから9カ月後に原油価格がピークを付けている。今回は1月が株価のピークで、原油価格は10月に高値をつけた。すでに9カ月のタイムラグが成立しているとすれば、株価も原油価格もしばらく低迷することになる。

ちなみに、ハイテクバブル後には、37.80ドルから16.70ドルまで下落し、下落率は55%に達した。リーマンショック後には、WTI原油は147ドルのピークから32ドルまで下落し、下落率は78%に達している。また、その後の2011年5月の戻り高値の114ドルから2016年2月の26ドルまでの下落場面では、77%の下落率になっている。今回も高値の76.90ドルから55%下げると35ドル、77%下げると18ドルまで下げる計算になる。金融市場が崩れるようだと、過去のような歴史的な大幅安となるリスクはあるだろう。

以上のように、原油市場を取り巻く環境は、10月に入って一変した。さまざまな材料が複合的に絡み合っているのだが、原油価格の上値を抑える要因がいまは多すぎると言わざるを得ない。

WTI原油はトレンドが下向きに転じており、ひとまず節目の50ドル前後で下げ渋るだろう。しかし、いったん明確に割り込めば、その後の下げは5ドル単位の大きなものになる可能性がある。これを回避するには、上記で指摘した弱材料が少しずつ解消され、市場センチメントが改善することが不可欠だ。

またアメリカの景気拡大基調が維持され、株価が大きく持ち直せば、原油価格も再び高値を目指すかもしれない。しかし、最終的にはアメリカの政治スタンスと需給バランスで価格水準と方向性が決まることになりそうだ。現状では、これらの要因が大きく変化することも想定しづらい。最終的に世界の景気がピークアウトすれば、原油価格は一時的に戻りを試したとしても、戻り売り圧力を背景にさらに下値を試すことになりそうだ。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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