OPEC減産でも原油価格は「暴落」しかねない 1バレル50ドルを大きく割れる可能性も?
しかし、アメリカの一部の上院議員はこの事件などに対する懸念から、イエメン内戦でのサウジ主導の連合国に対する制裁や武器売却を阻止する動きをみせているという。4日、カショギ事件についてジーナ・ハスペル中央情報局(CIA)長官が上院指導部に非公開で説明したが、サウジとの関係をめぐるトランプ政権と議会などの溝は広がっている。いうまでもなく、武器輸出で資金を稼ぐことは、トランプ政権における政策の優先事項でもある。しかし、この事件に関しては快く思っていないのも事実である。そこで「原油価格を押し下げ、サウジに間接的な経済制裁を加えて圧力を掛けつつも、武器を購入させる」という厳しい対応をしているのがいまのアメリカのサウジ政策だ。この観点から、アメリカが政治的にいつの時点で原油安政策を棚上げするかは、原油価格の今後を占ううえで最も重要な要素となる。
アメリカの産油量は今後も増える可能性
一方、アメリカの産油量は潤沢である。直近週の産油量は日量1170万バレルに達し、過去最高水準を維持している。石油掘削リグ稼働数も888基と高水準にある。米金融サービス会社のコーウェンによると、同社が調査している探査・生産会社の2018年の設備投資額は全体で900億ドルとなる見通しで、2017年の722億ドルから25%増加するという。
さらに、米投資銀行パイパー・ジャフレーは、2018年の石油・天然ガス掘削リグ平均稼動数を1031基、2019年は1092基、2020年は1227基と予測している。2017年は876基だった。年初来の石油・天然ガス掘削リグ稼働総数は平均1027基で、2018年通年では平均1862基だった2014年以来の高水準となる見通しだ。この予想通りなら、産油量の増加傾向がつづくことになる。
また、原油輸送のボトルネックも解消され生産コストが低下しているとの観測もある。以前は、多くのシェールオイル企業が「損益分岐点は65から70ドル程度」としていたが、最近では30ドル台でも十分に採算が取れるとの見方もあるようだ。そうなると、原油相場の下支えとなっていた生産コストが引き下がったことで、原油市場の底値水準もその分だけ引き下げられることになる。これは市場が十分に織り込んでいなかった要素であり、追加的な弱気材料と言ってよいだろう。またアメリカ内の原油在庫がここにきて増加傾向を鮮明にしていることも、原油価格の押し下げにつながっているといえる。
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