「電動カート」は郊外住宅地の新交通になるか 高齢化進む京急沿線の丘陵地で実証実験

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郊外住宅地で電動小型低速車の実験を行ったこと自体もさることながら、今回の実験でもう1つ画期的だったことがある。それは、横浜国立大学が作った他交通機関との連携を考慮に入れたリアルタイム情報案内システムだ。

地域の移動というのは電動小型低速車のような小型のモビリティだけで賄えるものではない。想定される利用形態は、あくまでバス停や鉄道の駅から家の玄関近くまでをつなぐもので、いわゆる「ラストワンマイル」と呼ばれる短い距離であろう。重要となるのは他の交通機関との連携だ。

そこで横浜国立大学が考案したのが「公共交通機関同士の乗り換え」を視野に入れ、位置情報と乗車人数をリアルタイムで取得し確認できる仕組みだ。安価なコンピューター「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」とICカードリーダーを用い、車両位置と乗車人数を送信できる車載端末を構築、その情報をインターネットや地域拠点の「富岡地域ケアプラザ」に設置した画面で確認できるシステムを構築した。

ほかの交通と乗り継ぎ簡単に

リアルタイム情報提供画面。電動小型低速車以外にバスの位置情報も表示している(画像:情報表示画面から筆者複写)

このシステムでは京急バスの協力の下、バスのルートと停留所の位置情報も数十秒ごとに取得して表示しているほか、地域の買い物拠点である「京急ストア能見台店」が運行する送迎バスのルートや停留所位置情報も表示する。つまり、地域内を走る鉄道以外のすべての公共交通機関のルートと現在位置が確認できる。これは私鉄が行った郊外開発モデルだからこそ可能となったことだと言えよう。

これまで、鉄道と路線バス以外の複数の地域内モビリティが1つの画面で一覧でき、乗り継ぎが可能なことがリアルタイムでわかるシステムはあまり存在しなかった。リアルタイム情報を一覧できる仕組みを安価で構築した例もほとんど聞かない。

今回の実証実験に合わせたリアルタイム情報提供システムについて解説する横浜国大の有吉亮特任准教授(筆者撮影)

このシステムを考案した横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院・有吉亮特任准教授は「ITに関しては専門家ではないため、研究室の学生に協力してもらい、手作り感満載のシステムだが作ることができた」と言う。

画面の細かいデザインや実際の動作状況を見ると改良の余地はある。だが、地域の暮らしをよく見たうえで、住民の動きとマッチしたシステムが構築されているのは確かで、市民生活を十分にサポートするものとなっている。有吉特任准教授は今後の目標として「今回の実験の中で乗り継ぎの需要もあったか調べたい」という。

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