「電動カート」は郊外住宅地の新交通になるか 高齢化進む京急沿線の丘陵地で実証実験
横浜市金沢区富岡地区。丘陵地帯に住宅地が広がるこのエリアで、10月末から11月中旬にかけて新しい交通システムの実証実験が行われた。
住宅地の中の坂道を進むのは、なんとゴルフ場でよく見かける電動のカート。「電動小型低速車」と呼ばれるこの乗り物、電動なので音は大変静かだ。しかし、自動車がうなりを上げて登るような急坂をものともせず、力強く走る。
この実証実験は、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団(交通エコモ財団)の交通環境対策事業「電動小型低速車の活用に向けた実証実験」の企画募集に京浜急行電鉄(京急)が採択されたこと、今年7月に横浜国立大学、横浜市がそれぞれ同社と協力・連携の協定を結んだことによる産学官連携プロジェクトの一環として行われた。
バスが走るには厳しい道だが…
京急富岡駅を中心とする富岡地区は、1950年代から京急が開発した住宅地(約6000戸)が駅西側の丘陵地に広がり、駅は谷底に位置する。駅前は手狭でバス乗り場へも勾配があり、買い物にも丘を越えたり、坂を登ったりしていかなくてはいけないケースが多い。高齢化も進んでおり、特に富岡第三地区の高齢化率は全国平均の27.7%(2017年10月1日時点)を上回る約30.8%(2017年3月末時点)となっている。そのため、日々の移動をサポートする手段が必要になりつつある。
こうした場所で最も導入しやすいのは小型バスだ。隣駅の能見台駅南側の片吹地区では市の道路局が行う「横浜市地域交通サポート事業」を活用した小型バス路線の開設が行われたほか、市内では13地区で同事業を活用したバスの運行が行われている。
しかし、この富岡地区はバスを運行するには狭すぎる道や勾配が厳しい場所がある。一方で、京急と横浜市とが実証実験を行うエリアを選定するために行ったアンケートでは、公共交通整備に対し強い関心があった。バスで運行するには条件が厳しいエリアで公共交通をいかに整備するか。そこで白羽の矢が立ったのが「電動小型低速車」だったというわけだ。
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