「電動カート」は郊外住宅地の新交通になるか 高齢化進む京急沿線の丘陵地で実証実験
横浜国立大学では、今回のプロジェクトにあたって住民へのアンケート・ヒアリングなどを行ってきた。今後は利用料金の支払い意思や、地域住民がドライバーとなることについての意識調査や検証を行い、継続的に実験を続けることができればチャレンジしていきたいという。京急側も今後は本格的な事業化に向けてさまざまな可能性を模索するという。ゆくゆくは「横浜市地域交通サポート事業」などを用いた本格運行も視野に入ってくるはずだ。
さて、この実証実験、見れば見るほど昨今話題の「MaaS」を意識しているようにも見える。地域内でストレスなく利用することのできるモビリティを整備し、それらを連携させる。自然に乗り継ぎを誘導し、ストレスない移動ができるようにユーザーを誘導し、公共交通への利用を促していく。この考え方はまさに「サービスとしてのモビリティ」であり、すぐに実現可能かつ、住民の生活が便利になるものではないだろうか。
AIや自動運転の前にできること
現在、自動車産業でもトヨタを中心に活発な動きが見られる「MaaS」。だが、その多くは自動運転、AIの活用、他分野への広がりによる経済効果といった点が主題になりがちで、市民の生活とリンクしたものとして見えづらい。今示されているモデルを見ても、中には実現性に首をかしげたくなるものや、他交通機関との連携が弱く「自社グループへの囲い込み」にしか見えないもの、自動運転車の再配置など課題が多そうなもの、思いつきレベルでビジネスモデルが不透明なものもある。
MaaSの最大のポイントは、異なる性格を持つ交通機関の連携だ。今回の取り組みは、地域特性に合わせたモビリティが整備され、それらを連携させて便利な生活を実現するというMaaS実現のためのインフラがそろっているといえよう。むしろ、AIなどブラックボックスな部分があるものを用いて大規模に面的に展開するMaaSよりも、安価で地域に導入しやすい分、近い将来での実現可能性は高いと言える。
まずは今できることで始め、展開し、便利な生活を市民に実感してもらうことで浸透させることが重要ではないだろうか。京急と横浜国立大学、横浜市の取り組みはそれを示しているように思える。
MaaSがバズワードになっているからこそ、考えたい市民生活と交通の関係。横浜・富岡で行われた電動小型低速車の実験はその基本をわれわれに問いかける実験である。今後も継続的に続けられることで、次世代の交通の可能性を示す試金石となるに違いない。
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