車両製造で快進撃「シュタドラー」とは何者か 鉄道見本市の展示数では大手メーカーを圧倒

拡大
縮小

特にディーゼルエンジンの場合、通常は1両に収まりきらず、複数の車両へ分散して搭載するなどして対処するため、短編成を組むことが困難であったり、あるいは燃料タンクの大きさが制限され、非電化区間の走行距離が短くなったりするなどの問題も出てくる。

「Flirt UK」755系車両の中間に組み込まれたディーゼルエンジン搭載のモジュール(筆者撮影)

そこで、このFLIRT UKでは、編成中1つのモジュールは乗客を乗せず、ディーゼルエンジンや機器類のみを収める割り切った構造とすることで、長距離走行するのに適した大出力エンジンや大型燃料タンクを搭載することが可能となっている。

日本のメーカーや鉄道会社であれば、通常の車体の半分程度とはいえ、乗客を乗せないスペースを編成中に設けることは極力避けるだろう。だが、欧州では長距離の非電化路線が多く存在するうえ、鉄道会社からの要求がそこまで厳しくないことから、既存の技術を応用したうえでいかに効率よく鉄道会社の条件に合致させた車両を製造するか、という部分に焦点を当てることができる。設計の自由度という面では、日本より柔軟性が高いと言えよう。

グレーター・アングリア社は、このバイモード車両(755系)を3両編成14本、4両編成24本発注したほか、同型でディーゼルモジュールを持たない電車バージョン(745系)を12両編成20本、同時に発注している。同系車の導入は、保守部品の共通化によるメンテナンス性の向上やコスト削減にも寄与している。前者は電化幹線と非電化ローカル線の直通用で、後者は電化幹線の近郊輸送、とりわけロンドンを起点とした都市圏輸送に使用する予定だ。

他社と共同受注の車両も

2018年のイノトランス会場に設けられたシュタドラーのブース(筆者撮影)

シュタドラーはまた、細部まで完全自社製にこだわらず、同業他社と共同で受注したうえで特殊な部品や制御装置などを他社に任せる手法も目立つ。

かつては複数のメーカーが共同で受注することは珍しくなかったが、メーカーの吸収合併が加速し、たいていの部品や装置を自社内で賄えるようになってきた昨今では、競合他社と手を組んで製造するという手法は珍しくなりつつある。

今回の展示車両で言えば、イギリス・グラスゴー地下鉄向けの車両と、会場のある地元ベルリンのSバーン(都市圏通勤電車)用新型車両が、他社との共同受注車両となっている。

次ページ日立グループやシーメンスの技術を採用
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT