車両製造で快進撃「シュタドラー」とは何者か 鉄道見本市の展示数では大手メーカーを圧倒

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グラスゴー地下鉄の新型車両。車体などのベースはシュタドラーが製造し、自動運転システムは日立グループのアンサルドSTSが担当している(筆者撮影)

グラスゴー地下鉄は、新型車への置き換え完了とともに全線の完全自動運転化が予定されており、この新型車両にも自動運転システムが搭載されている。そのシステムにはアンサルドSTS社の技術を採用している。

アンサルドSTSは、全自動運転技術および欧州標準信号ERTMS/ETCSの主力メーカーとして高い技術を誇り、現在は日立グループとなっている信号・制御技術メーカーである。シュタドラーは、車両そのものを設計、製造する技術は高いが、こうした高度な信号・制御系システムの技術は持たないため、車体関連等の基本設計は同社が手掛け、信号システムだけをアンサルドSTS社に委ねている。

ベルリンSバーンの新型車両483/484型はシーメンスとの共同受注だ(筆者撮影)

一方のベルリンSバーン用483/484型車両は、制御装置や台車、モーターなどの足回りだけドイツ・シーメンス製となっており、同車両の展示ブースでは、シュタドラーとシーメンス双方の技術者が説明に当たっていた。この車両はベルリンSバーンにとって20年ぶりのフルモデルチェンジ車で、初の冷房搭載車両であり、ベルリン市内の環状線と同線に接続する複数の支線へ投入され、現在も多く残る旧型車両を置き換える計画だ。

今後の生き残り策は?

一時期、中国中車が欧州メーカーの買収を検討していた際、リストの中にシュタドラーの名前が上がっていたこともあったが、現時点では引き続き独自の道を歩んでいくことが同社から発表されている。

とはいえ、わずか数年前まで業界大手として「ビッグスリー」に名を連ねたシーメンスとアルストムは鉄道事業の統合計画が進展、ボンバルディアは一時中国メーカーに買われるのではないか、という危機的状況に陥った。いったん収束したとはいえ、今も同社の将来についてはさまざまな噂が流れている。この先、鉄道車両メーカーという業種にどのような未来が待ち受けているのか、まったく予想もできない。

だが1つ言えることは、今後もさらに業界再編は進み、弱肉強食の様相を呈していくことは間違いなさそうだ。はたしてシュタドラーは、自ら食うものとなるか、他社に食われてしまうのか、この先もその動向から目を離すことができない。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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