前田裕二「可処分精神を奪い合う時代が来る」 「個人の熱狂」こそがこの世界を変える
これはすごく人間的な心の動きだと思っていて、僕はまったく否定しないどころか、こうした行動が増えると温かい世の中になると思っています。仮に利己性に依拠していたとしても、表に出てきている行動が「利他」なのであれば、社会はもっと滑らかになります。
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOも同じで、ある時、資産のほとんどを寄付すると公表していました。それを誰にも知られないように行っていたなら話は別ですが、一瞬で全世界的なニュースになりましたよね。これでいいのです。利他的行動がこうして可視化されることによって、人がどんどん、さらに人のために行動を起こすのですから。
日本の若者は精神的充足を求めている
日本の若者も変化しています。いまは普通にバイトすれば、それなりにおいしいものが食べられますから、みんな枯渇していません。1987年生まれの僕の時代は、経営者と言えば藤田晋さんや堀江貴文さんなどを見ていましたから、成功者は高級車やプライベートジェットに乗って、両脇に美人がいて……というイメージを何となく追っていたかと思います。しかし、今は違います。
著書『モチベーション革命』の中で尾原和啓さんが語っていますが、若者は、宅飲みかサイゼリアの300円のワインで十分幸せ。求めるものは、人とのつながりや、自分が誰かの役に立っているかどうか、世界に対して自分は意味を果たしているか、などといった、「精神的充足感」に寄ってきています。物理的に、ではなく、精神的に満たされたいわけです。
――GAFAはまだ、そのような精神的充足のニーズに気がついていないということでしょうか?
当然、気づいていないことはないと思います。が、「物理的ニーズ」を満たすことを前提にビジネスモデルが組まれているので、ここからシフトチェンジして抜本改革を起こすことはなかなか難しいでしょう。
アマゾンでなぜ物が売れるのでしょう? 単純です。価格や利便性を含めて、最終的には、「物」に価値があるからです。アマゾンは「人」の価値で物を売っていない。ところが最近では、「物が良いかどうかは正直わからないけど、この人が良いと言うからそれを信じて買う」という市場が成長しています。物フックではなく、人フックで物が売れるわけです。
Google Mapでも、たとえば「蕎麦」と検索すると、物理的にいちばん近いそば屋が出てきますが、それはあくまでも「そば」という物フックによる検索結果ですよね。でも、それが本当に最適な検索結果なのでしょうか。キングコング西野さんは、「せっかくつながりがあるのだから、オンラインサロンの中でお金を落としたほうがみんな幸せだろう」ということで、サロン内での人フックの検索を考案しています。
これはとても本質的です。人フックならば、仮に物理的距離が遠かったとしても心理的距離は変わるはずですし、それを反映する新たなマップが生まれてもよいでしょう。そういうことは、まだ世界で誰もやっていません。
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