低価格スマホ「モトG」の恐るべき破壊力 SIMフリーの世界に訪れる大波

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デバイスメーカーにとって大きな影響

グーグルは、子会社のモトローラを活用して、価格面でかなり破壊的な戦略を打ち出してきた格好だ。「モトG」は、ミドルレンジ層やまだスマートフォンを利用していない層でのアンドロイドのシェア拡大に一役買うかもしれない。

少なくとも、ミドルレンジのデバイスは、SIMフリーで200ドル以下、という新たなバーが設定されてしまったことは間違いない。他の企業は、この価格にチャレンジすることができるのか。特にアップルにとっては、ミドルレンジ市場で、「モトG」がiPhone 5cの強力なライバルとなることを意識したほうがよいだろう。

影響を受けるのはアップルだけでなく、ほかのデバイスメーカーも同様だ。

特にこれまで世界的にアンドロイド端末のシェアを獲得してきたサムスンにとっても打撃は大きい。ハイエンドのデバイスの座はGALAXY S4やGALAXY Note 3と、これらの後継モデルできっちりとガードして譲らないだろうが、より大きな台数を売り上げるミドルレンジ、ローエンドについては、「モトG」と同等の価格や条件で対抗できるかどうかわからない。これは台湾のHTCにも共通した挑戦となる。

価格競争力が高い中国のデバイスメーカーにとっては、先進国のミドルレンジ以下の市場への進出の妨げになることが考えられる。またノキアを買収してウィンドウズフォンの普及に努めるマイクロソフトにとっても、痛い一手となった。

キャリアの対応、日本ではどうなる

携帯電話会社としては、こうしたSIMフリー端末のユーザーが増えれば増えるほど、よりシンプルに通信契約を結ぶだけとなり、顧客とのエンゲージメントは下がっていく。顧客をつなぎ止めるためには、エリアや通信速度といった「品質」での勝負をしかける必要があるだろう。

一方、SIMフリー端末を選ばない魅力を打ち出そうとしているキャリアもある。たとえばAT&Tでは、「AT&T Next」と呼ばれる新しいプランを打ち出した。このプランでは端末を購入するのではなくリース契約のような形で毎月の利用料金に上乗せして支払い、毎年、機種変更代などを支払わずに新しい端末を利用し始められる。これなら、2年契約よりも有利だし、SIMフリー端末よりも購入時のコスト負担を減らせる。

日本で「モトG」が登場すると、どんなインパクトがあるだろうか。

SIMフリーのiPhoneの受け入れ態勢を見ると、3大キャリアはあまり準備ができていないように思える。iPhoneでは出遅れたが、他キャリアからも利用できるIDなどを整備しているドコモが一歩リードといったところだろうか。

MVNOの日本通信などは、こうした端末が増えることで、自社の魅力を高めることができるだろう。これまでと違う端末とSIMの買い方を提案したり、仕組みを理解してもらったりする努力も必要だ。また2020年のオリンピックに向けて、外国からの旅行客に使いやすいプランを提供する際にも、「モトG」のような端末を意識しなければならない。

日本ではSIMフリーのiPhoneに議論が集まるが、SIMフリーの世界には、より大きな荒波が押し寄せているのである。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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