人が集まらない!建設ワーキングプアの実態 突然の活況で建設業界の問題が露呈

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建設現場で働くよりコンビニのアルバイトのほうがいいというのは、もはや業界の“定説”。現場からは「生活保護を受けたほうがよっぽどマシ」という声すら上がる。

特に賃金の低下がきつくなったのは、業界全体の受注量が激減したリーマンショック以降だという。これを機に、建設業界に見切りをつけ、多くの職人が現場から去った。業界で働く人の数は、15年前と比べて約180万人も減った。約27%の減少だ。従来から高齢化も進んでいたが、今では労働者の3人に1人が55歳以上となっている。

もともと建設現場は3K(危険・汚い・キツイ)職場と言われる。それでも人が集まっていたのは、それに見合う報酬を得ていたからだ。「かつては現場の技能労働者のほうが、ゼネコンの技術者よりよっぽど羽振りがよかった。技能労働者は現場に外車で乗り付け、ゼネコンの技術者は一番下の国産車、というのが定番だった」(スーパーゼネコン幹部)。それがこの現状では、業界を目指す若者など出てくるはずがない。

業界の特異構造がカベ

国も対策に乗り出している。今春には公共工事にかかわる標準の労務単価を約15%引き上げた。労務単価の引き上げは実に16年ぶり。それでも低賃金が一足飛びに解消されるわけではない。

業界の特異な構造も、賃金適正化のカベになっている。建設業界は元請けから、1次下請け、2次下請けと幾層にも分かれている。元請けであるゼネコン自らが技能労働者を抱えることはなく、実際には2次以下の下請けが労働者を呼び集める。重層構造は10次以上にわたることもある。そのため、元請け段階で賃金が上がっても、それが末端の労働者までこぼれてくる保証がないのだ。

このままでは人手不足がボトルネックとなって、今後の建設投資が消化しきれない可能性がある。人手不足が露呈したことで、「世の中の関心がようやく技能労働者の待遇問題に向いてくれる」(内山会長)。五輪へと続く建設ラッシュに浮かれるよりも、まずは建設現場の現実に目を向けることが必要だ。

週刊東洋経済2013年12月7日号(12月2日発売)では、突然の活況で浮沈するゼネコンの現状について、40ページにわたって特集を組んでいます。

並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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