駅の鉄道文字、手書きでなくても「味」はある 安全と視認性、フォントを決める本当の理由

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古い鉄道文字には、そうした職人の息づかいまで感じられるような魅力があることがわかったが、新しいもので気になるところはないかと中西さんに聞いたところ、2017(平成29)年に完成した阪急電車十三駅の地下通路・跨線橋の美装化を挙げた。

十三駅は、阪急神戸線・宝塚線・京都線の線路が並んでいるため、1つのホームは神戸線の梅田方面行きと宝塚線の宝塚方面行き、またもう1つのホームには宝塚線の梅田方面行きと京都線の河原町方面行きの電車が発着するというわかりづらい構造になっている。しかも、各線梅田駅に行くというのもさらに複雑にしていて、利用者からは「どれに乗ったらいいのか?」という質問が寄せられ、駅員からは「もっと案内しやすくしてほしい」という声が高かった。

十三駅はデザインで利用者を誘導する

そこで、壁一面に路線カラーを貼る、階段の入り口にホームの号線番号を大きく表示する、路線案内に見立てた矢印には各線の駅名をすべて表記する、さらにそこにスポットライトを当てる、といった大胆なデザインで利用者の誘導を図ったのだ。

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「阪急電車としての統一デザインはもちろんありますが、それをバックボーンに置きながら、十三という駅の特殊性に合わせたその駅ならではのデザインを大胆に取り入れたところに新しさがあります。和文の書体に「ヒラギノUD角ゴシック」、欧文にドイツの工業規格由来の「DIN」を採用したのも、この駅独自のものです。この十三でも、大胆な美装化をしながらも阪急のブランドイメージを崩さないために、細部まで気を配ったと担当者が言いますが、鉄道の案内表示はつねに規程・マニュアルの制約のなかにあります。鉄道文字は、安全に利便性高く確実に乗客を送り届けるという鉄道本来の機能を果たしながら、つねによりよいものを求める情熱で、継承され、変革されてきたのです」

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