イギリスの「合意なき離脱」で何が起きるか 7つの項目でチェックしてみた
② 貿易
少なくとも短期的には、貿易障壁が高くなることで、英国、EU双方の企業が打撃を受ける。
英国の輸出企業はEUの輸入関税に直面する。関税率は平均5%だが、同国の主力輸出品については、自動車に10%が課せられるなど、さらに高くなる。
製造企業は、通関手続の遅れによって自らの「ジャストインタイム」製造方式に支障が出ることを危惧している。
だが離脱賛成派は、テクノロジーの活用により通関手続の遅れは緩和されると予想。将来的に英国がEUとの自由貿易協定を実現すれば、輸出も自由に行えるようになると主張している。
また同賛成派は、EUとの緊密な関係を続けるよりも、米国やインド、中国といった、より成長率の高い国々と貿易する方が英国にとって利益になるとも主張している。ただし、英国財政を予測する担当者は、こうした諸国との2国間貿易による恩恵は小さなものに留まる可能性が高いとされている。
大型トラック駐車場に転用する計画
③ 港湾、企業倒産、備蓄
最初に影響が出る可能性が高いのは、港湾と空港だろう。政府は、イングランド南部の自動車専用道路2本と空港1カ所を、必要に応じて大型トラック駐車場に転用する計画を立てている。
フランスのボルヌ運輸相によれば、合意なきブレグジットに備えて、フランスは、港湾における通関手続きや検査対応を中心に、さまざまな措置を準備しているという。
英国勅許調達供給協会(CIPS)では、部品・原材料等の通関手続が10─30分遅延することによって倒産する懸念を抱いている英国企業は、全体の10分の1に及ぶと試算している。
多くの製造企業は、通関手続が遅れた場合でも製造ラインを稼働させ続けるために、部品の備蓄を進めている。英国政府は製薬企業に対し、薬剤の備蓄を通常より6週間分積み増しするよう要請している。