イギリスの「合意なき離脱」で何が起きるか 7つの項目でチェックしてみた

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④ 財政とイングランド銀行

ハモンド英財務相は、ブレグジットが経済的なショックを与える場合に備えて財政支出を拡大すべく、財政上の予備費を積み上げてきた。

同財務相は同時に、長期的には、合意なきブレグジットという事態に陥るとすれば、緊縮財政を終らせるという自身の公約を考え直すことになる、と警告している。

離脱賛成派は、合意なき離脱は、EU予算に対する英国政府からの資金拠出がただちに終了することを意味しており、公共財政にとってプラスになるはずだと主張している。

英中銀は投資家に対し、合意なき離脱ショックが生じた場合でも、ただちに中銀が救済に動くとは当てにしないよう警告している。英ポンド下落によって、同国のインフレ率が押し上げられ、利下げの障害となる可能性がある。

ポンドは下落へ

⑤ 英ポンド

経済に打撃を与える可能性が高いことを考慮すれば、合意なきブレグジットによって、恐らくポンドは下落する。ポンドの対ドル相場は2016年にEU離脱を決めた英国民投票以来、約13%下げているが、この幅がさらに拡大することになる。

ロイターが1日発表した市場ストラテジストを対象としたアンケート調査によれば、EUとの合意が成立しない場合、ポンドは6%以上下落するが、合意成立の場合には約5.5%上昇すると予想されている。

⑥ 英国株価

ポンド安になれば、世界で事業展開する英最大手企業の多くにとって、株価が上昇する可能性がある。FTSE100種株価指数の構成銘柄であるブリティッシュ・アメリカン・タバコやGSKなど、収益の7割を海外で稼いでいる企業がそれに含まれる。

だが、より国内市場に注力して、収益の半分を自国に依存するFTSE250種株価指数に含まれる企業は打撃を受ける可能性がある。

従来の相関関係がいまも有効だとすれば、これは理にかなっている。だが先週、FTSE100と英ポンドがどちらも下落し、こうしたトレンドが一時的に乱された。秩序なきEU離脱リスクの上昇が投資家を動揺させるなかで、珍しく双方が連動する動きが生じている。

⑦ 債券

合意なき離脱による経済ショックが生じた場合、通常であれば、投資家は英国債という安全資産に流れるはずだ。債券価格とは反対方向に動く英国債利回りは15日、2016年以来最大となる下落を記録した。

だが、合意なき離脱はメイ首相にも大きな打撃を与え、新たに総選挙が行われる可能性がある。いくつかの世論調査では左派の労働党が優位に立っており、公共投資の大幅増を公約する同党の政策は、一部の投資家を動揺させることだろう。

(William Schomberg 翻訳:エァクレーレン)

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