「女子割礼」議論がマレーシアで白熱するワケ これははたして文化的義務なのか

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しかし一方で、イスラム教団体「インドネシア・ウラマー協議会(MUI)」や保守的イスラム教学者などからは、「女子割礼はイスラム教徒の証であり、高貴な行為として奨励されるべき宗教的義務である」として政府の禁止措置に異を唱えている。

とはいえイスラム教団体や学者の間でも具体的な方法については、「陰核の一部を切り取る」ことは禁止しているほか、「陰核を覆う薄皮だけを切り取る、傷つける」ことが正しい方法である、との見解を示しているMUI地方支部もあるなど、必ずしも一元化されていない。

甘い果物を食べることを戒める風習も

このほか、インドネシアでは若い女性がパパイヤやパイナップルなどの甘い果物を食べることを戒める習慣が特に地方には依然として残っている。理由は「膣への分泌が増え好色、淫乱になる傾向がある」というこれもまったく根拠のないものだ。この背景にもイスラム教の「女性はつねに慎ましく、貞操的であれ、純潔であれ」との価値観が色濃く反映されているという。

マレーシアでの女子割礼を巡る議論が白熱する中、「割礼はマレー文化である」と発言した医学博士でもあるワン・アジザ副首相は、同日国会内で記者団に対し「健康省と女性家族開発省の間で女子割礼に関する協議を始めている」ことを明らかにした。

「その協議の結果をみてから今後のことは検討したい」としており、マレーシア政府や自らの「文化である」との発言への強い反発を考慮して、政府として「女子割礼が本当に必要なものなのかどうか。必要ならどのような方法が利益のあるものなのか、必要ないならどうするのか」という検討を通じてマレーシアの立場を内外に示したいようだ。

時代の趨勢は、「女子割礼は禁止あるいは形式化、簡略化」であるのに対し、「女子割礼は文化」との意識が根強いマレーシア。見直し協議を経て、はたして女子割礼を国際的なスタンダードに合わせることはできるだろうか。

大塚 智彦 フリーランス記者(Pan Asia News)

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おおつか ともひこ / Tomohiko Otsuka

1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からはPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材執筆を続ける。現在、インドネシア在住。著書に『アジアの中の自衛隊』(東洋経済新報社)、『民主国家への道、ジャカルタ報道2000日』(小学館)など。

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