「女子割礼」議論がマレーシアで白熱するワケ これははたして文化的義務なのか

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さらに、イスラム教徒女性の93%が割礼を受けているという数字を背景に「マレーシアの割礼はアフリカの女子割礼とは異なり、文化的な義務でもある」との姿勢を示したため、国内外から賛否を含めた議論がネット上や地元マスコミで沸騰する事態に発展しているのだ。

国連などでよく問題提起され議論の対象となる女子割礼の大半は、アフリカなどでの習俗として残るものだ。これは、「エクシジョン」と称される「陰核(クリトリス)と小陰唇の一部または全部の切除」や、「ファラオリック」と呼ばれる「陰核、小陰唇、大陰唇の部分または全部の切除、あるいは膣の大半の縫合」などである。

対して、イスラム教徒の女性が行う割礼は「クリトリデクトミー」という「陰核の一部または全部の切除」のカテゴリーに当たるものとの見解が一般的だ。

コーランには割礼そのものを認める記述はない

かつては医師や助産婦が消毒したナイフで女児の陰核を部分的ないし全部を切除するのがイスラム教徒女性への一般的割礼だったが、それがマレーシアでは近年、「陰核を覆う皮の切除」へと見直されてきている。

イスラム教の聖典「コーラン」には、割礼そのものを認める記述はないとされている。ただし、「預言者ムハンマドの言行録(ハディース)」の中に「割礼は男子にとってスンナ(慣行)であり、女性にとっての栄誉である」などの記載があり、これが「割礼の根拠」とされている。

男子に対する割礼は、通過儀礼として全世界のイスラム教徒に定着していることや割礼に伴う副作用やそれに伴う危険が少ないこと、亀頭部分の衛生保持などの医学的理由から反対論や異論はほとんど出ていない。

しかし、女子割礼はどんな形であれ敏感な部分を刃物で傷つけたり、切除したりすることから「出血多量」や「感染症」で重篤な症状に陥る事例や、アフリカなどでは死亡例も報告されており、女性の側からその必要性への議論が続いているのだ。

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