「女子割礼」議論がマレーシアで白熱するワケ これははたして文化的義務なのか

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国際社会では、「アフリカの割礼は習俗で危険だから禁止し、イスラム教の割礼は宗教でそれほど危険ではないから許容する」という線引きは難しく、女性の身体保護や人権保護の立場から女子割礼の全面禁止に向けた議論が続いているのが現状である。

世界保健機構(WHO)も女子割礼に関して「いかなる割礼も女性の体、健康にいいことはない」との声明を出している。

インドネシアでは形式的、簡略化された方法に

こうした女子割礼の国際的潮流の中で、世界最大のイスラム教徒人口を擁する(人口約2億6000万人の88%)インドネシアでは、イスラム教徒の女性は生後3~4歳で割礼を受けるのが一般的だが、現在は約50%の女子しか割礼を受けなくなっているという。

インドネシアでは女子割礼に対して、割礼を受けないと「精神疾患や障害のリスクがある」「ふしだらな女性に育つ」などという医学的根拠の全くない理由付けがされていることも割礼を受けない女性が半数近くに達している一因と分析されている。

割礼を受ける女性も、陰核を切除するのではなく、消毒した針やメスでわずかに刺したり、切り込みを入れたりするという極めて形式的、簡略化された方法が大半であるとしている。こうした方法での割礼の場合、伴う出血はごくわずかで女子への精神的、肉体的負担が軽減される。

ジャワ島の一部では、多年草のウコンを陰核の隣に置いて、このウコンを陰核の代わりに切除するという「割礼の象徴化」で済ますことも行われているという。この方法であれば女子の身体には全く影響がなく、かつ安全である。

それでも国際社会の女子割礼への風当たりの強さへの配慮から、インドネシアでは2006年4月に保健省が「医療関係者による女子割礼禁止」の通達を社会健康育成局長名で出し、表向きは、女子割礼は禁止となった。

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