JALパイロット「飲酒逮捕」問題の根本原因 急成長の裏で、過重労働が空の安全を脅かす
10月下旬には、ANAホールディングス傘下のANAウイングスでも、社内規定の乗務12時間前以降に飲酒したパイロットが体調不良を訴え、沖縄の離島路線で乗務予定だった5便がそれぞれ1時間弱遅延する事案が発生した。
ANAHDの片野坂真哉社長は「運航にかかわる者のアルコール教育を一層徹底する」とし、JALと同日に開いた記者会見で陳謝。航空機だけでなく、「人の安全・点検にもしっかりと取り組みたい」と話した。ANAは全パイロットに携帯型呼気検査機を貸与するなど、自己管理の徹底と検査体制の強化を進めるという。
JALやANAだけの問題ではない。前出の小林氏は、「大手は交代要員がいるが、(人員に余裕がない)LCC(格安航空会社)で同じことが起これば即欠航となってしまう。JALやANA以外を厳しく見る必要がある」と指摘する。
国も対策に動き出した
国土交通省は事態を重く見て、「航空従事者の飲酒基準に関する検討会」を設置。有識者を集め、海外の運航乗務員の飲酒関連基準を参考にし、飲酒に関する基準の検討を進める。
JALの赤坂社長は会見で、JAL社内の「飲みニケーション」文化について、「(これまでは)世代間のコミュニケーション手段として、(お酒を)是としているところはあった。公共交通機関の一員として、これについても考え直さなくてはならない」と言及した。
空港で地上業務をこなすグループ社員の反応は冷ややかだ。「パイロットはこうした事態が起こっても、世間から直接反応を受けない。だが、われわれグループ会社の地上職員は、ほとんどかかわりのないパイロットの失態、それに伴う遅延についてお客様からクレームをぶつけられる」。「自覚が感じられないし、会社の看板として情けない」(ともにJALグループ関係者)。
航空評論家の小林氏は、「パイロットは飛行機をコントロールする前に、自分をコントロールすることが重要」と強調する。JALをはじめとする航空業界は、信頼を取り戻していけるか。成長と安全の狭間で、難しい舵取りが求められる。
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