中東勢台頭で高まる石油化学業界の再編機運

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 「来年には中東のプラントが本格的に動き出す。仮に世界的に需要が回復しても、化学メーカーを取り巻く環境は厳しくなるだろう」(伊藤一郎・旭化成副社長)。

2009年問題--。石油化学業界では、来年に危機的状況が訪れるという予測が高まっている。野村証券金融経済研究所の西村修一主任研究員は、危機予測の背景を「中東プラントの台頭にある」と解説する。

「中東では来年、大型プラントが続々と立ち上がる。中東勢は原料立地を強みに、エタンガスを使ったエチレンとその中間製品を輸出する。日本や韓国からの中国向け輸出製品は価格競争力で中東製品にかなわず、大幅に減少する可能性が高い」。

主原料の違いで価格は数十分の一

日本の経済発展を支えてきた石化コンビナート。半世紀前に国内初のコンビナートが誕生して以来、石化産業が生み出す素材は、自動車、コンピュータ、電子・電気機器など日常生活を取り巻くあらゆる分野に向けて提供されてきた。

現在、日本に存在するコンビナートは、三菱化学、丸善石油化学など大手を中心に9カ所で計15施設。多くの石化製品の基礎原料となるエチレンの生産量は約774万トン(07年)に上る。そのうち約3分の2強が内需向けだが、「国内市場は01年ごろから頭打ちが続いている」(商社関係者)。日本の市場が飽和状態のため、化学メーカーはやむなく中国を中心とするアジア向けを拡大することで、操業度を維持してきた。

が、そのアジア戦略への大きな脅威となりそうなのが、中東プラント勢の台頭だ。中東では従来、石油の採掘事業が主だったが、欧米や日本からの技術供与もあり、目下プラント建設が急拡大。その価格競争力の主因は、石化製品の主原料の違いにある。日本では石化製品を作る際、原油を精製して得られるナフサ(粗製ガソリン)が主原料。それに対し、中東産油国では天然ガスや原油採取時の副産物であるエタンを主原料とする。エタン価格はナフサ価格の数十分の一程度。「価格ではかなわない」(西村氏)というのもうなずける。

その中東製品が大量にアジアへ流れ込んでくるのが、09年だ。中東品の普及で、エチレンを基礎原料としたプラスチック、合成繊維などの凡用品のアジア向け輸出は減少を余儀なくされる。そうなれば国内は「エチレン設備の再編が不可避」(西村氏)となる可能性が高い。

中東勢を迎え撃つ日本勢の対抗策として、業界再編を期待する声はかつてないほど高まっている。現在、日本の生産設備は、海外メーカーに到底及ばない。世界売上高首位のダウ・ケミカル、2位のエクソンモービルのエチレン生産能力は、日本メーカー全体の生産能力をも上回る。世界10大メーカーのエチレン平均年間生産能力は約570万トンで、日本平均の約8倍。こうしたプラントの競争力に加え、「エチレン生産設備は国内で3~4社あれば十分」(高下悦仁郎・三菱化学常務)といわれる水準に比しての過剰設備状態も、再編圧力につながっている。

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