日本の緩い企業SNSが米国でありえないワケ

「不遇な立場」にあるアメリカのSNS担当者

“中の人”や“軟式アカウント”を、アメリカのマーケターに説明するのは、意外と難しい。そもそも企業やブランドという“看板”を表に出しながらも、まるで友だちと世間話をするかのように、フランクにフレンドリーな会話をする企業アカウント自体、それほど多くはない。

また、ときには(企業やブランドという“看板”があるのに)自分の個人的な意見を述べてみたり、さらに、いろいろなネタを振られたら、それに反応したりと、自由なコミュニケーションを展開させることもしばしば見られる。そのうえ競合にもなりうる企業の公式アカウントに絡んだり、一緒に遊んだりするような自由奔放な動きを見せることも決して珍しくはないが、こういった企業アカウントをアメリカで探すのは、意外と難しい。

例えようがないので、説明しづらくなるし、細かく説明をしたところで「そんなアカウントあるのかい?」と信じてもらえなかったりする。

いや、もちろんアメリカの企業ツイッターアカウントが、みんなそろって、自らの広告や広報的なメッセージばかりを淡々と発信し続けているわけではない。ユーモアをふんだんに交えた、ひとクセもふたクセもあるアカウントだって、決して珍しいものではないし、競合批判等の度が過ぎて、時折炎上するようなアカウントだって少なくない。

ところが、それは日本で、いわゆる“中の人”が運営している“軟式アカウント”とは、似て非なるものだ。企業やブランドの“看板”のウラに、明確に“個性ある個人”(だが、見えるのはあくまでも個性だけであり、その“人となり”は隠れている)が存在するような形はアメリカでは、ほとんど見掛けられないのだ。

アメリカのSNS担当者は恵まれないポジション

アメリカの企業アカウントでは、企業やブランドを出している以上、そこに(社内の担当者とはいえ)別な“個性”は入ってこない。逆に“個性”を出す場合「◯◯社で△△をやっている✕✕」といった形で、きちんと個人を出す。たとえば、経営者や役員などは、その最たる例だし、営業担当者やサポート担当者なども同様だ。両者の間の線引きがはっきりしている。

もちろん、これは日本とアメリカの文化の差という背景もあるが、それ以外にも理由がある。たとえば、アカウント運営を内製化するか、もしくはアウトソースするかといった違いは、その最たるものだ。日本企業の場合、特にフランクに、積極的にユーザーとコミュニケーションを取る企業アカウントは内製で運営されているケースが多い。つまり“中の人”によるものだ。

実際、組織の中にいないと、思いのほか見極められない、フォーマルとカジュアルのボーダーぎりぎりのところを歩くようなコミュニケーションは、アウトソースでは絶対に不可能だろう。多くの場合、社内に“ソーシャルメディア担当者”や“ソーシャルメディアマネージャー”といった役職を持つ担当が専任で運営業務を行っている。仮に専任担当がいない場合であっても、ソーシャルメディア上でのコミュニケーションに長けた社員が、自身本来の業務と兼任する形で、運営業務を一任されていることが多い。

次ページSNSの”中の人”は割に合わない?
ビジネスの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 映画界のキーパーソンに直撃
  • 最新の週刊東洋経済
  • 岐路に立つ日本の財政
  • 女性の美学
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
ナベツネが腹を割って語る<br>政治、そしてメディアの未来

読売新聞主筆として93歳の今も、社論をまとめる要の役割を果たしている渡邉恒雄氏。安倍首相と定期的に会食するなど、なお政治のキーマンでもある。歴代の首相を知る同氏は現在の政治とメディアをどう見ているのか。本誌編集長がインタビュー。