高水準の携帯料金”踏み倒し”-好調ソフトバンクの重い課題
中間決算発表を予定より早め、「非開示」だった業績予想を公表したソフトバンク。キャッシュフロー予想も出し、資産担保証券750億円の損失リスクを明かすなど「投資家の不安に応えるため」(孫正義社長)に、例年にない情報開示を行った。
“見えない不安”の解消に努めた結果、10月下旬の決算直前まで売り込まれた株価もひとまず反発した。さまざまな開示が行われた中、実は今後の展開を見るうえで重要な情報があった。2009年度の増益要因の一つとして挙げた「不良債権の改善効果100億円」がそれだ。
膨らんだ不良債権
通信会社の「不良債権」とは、契約後に通信料金を踏み倒されたり、割賦契約で販売した端末代金が支払われない債権のことをいう。携帯会社は販売時に多額の顧客獲得コストをかけており、料金回収のメドが立たないものは、貸し倒れ費用として跳ね返る。
ソフトバンクモバイルの藤原和彦CFOは「前期までの累計で貸倒引当率は7%だったが、今年度は四半期ごとに6%台、4%台と減っている」と話す。本人確認の徹底や信用情報とのマッチングなどで、さらなる改善を図るという。携帯電話事業で割賦販売を主体とする同社の場合、毎月の割賦債権が300億円程度とすれば、貸倒引当率7%で21億円。3%まで低下すれば9億円で、年間ではざっと100億円以上の改善につながる。「不良債権の改善」とは、こうした効果を見込んでいるわけだ。
NTTドコモの第2四半期決算資料では、売上債権7251億円に対して貸倒引当金は136億円で引当率は約2%、KDDIでは約3%。すでに改善したとはいえ、ソフトバンクの「7%」は看過できない水準だったといえる。実際、決算説明会でも孫社長は「割賦販売による不良債権の累積が500億円あった。猛反省している」と語った。業界関係者からは「数十万規模での不正な契約があり、アジアなど海外への転売に使われたのではないか」との見方があるほどだ。
ここ1年半、純増契約数でトップを走るソフトバンク。今後も「トップ」にこだわるならば、借金返済と同様、携帯事業における不良債権の着実な圧縮もまた、健全な成長のカギとなる。
(撮影:風間仁一郎 =週刊東洋経済)
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