「朝型人間は仕事ができる」の怪しすぎる根拠 成果との相関関係をしっかり見極めるべきだ

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人事部は、役員会で朝型社員が増えたことを報告。役員から「よくやった」と褒められる結果となりました。ところが、当初から朝型であったDさんが人事部にクレームをつけました。それは

「早朝に出社する社員が増えて集中できない」

とのこと。同僚のなかには早朝に支給される朝食、割り増し賃金目当て出社する社員もいるようで、オフィスで雑談をしている社員が増えて、雑然とした朝の様子に変貌してしまったようです。Dさんは

「ならば、集中して仕事ができる空間をつくってくれないか」

と要望。当初のモデルとなった社員からのクレームに人事部は戸惑いました。すると人事部の若手社員から意見が出てきました。

「朝型社員と業績との相関性をみてみましょう」

Dさんだからこそ早朝勤務との相性が良かった

朝型に変えた社員は業績が高い傾向が出ているので、会社としては続けたい……と回答したいからとのことでした。この意見には人事部も賛同。朝型に変えた社員の業績を分析することにしました。すると、朝型に変えた人と変えていない人の業績で大きな違いを見出すことができなかったのです。

「データからみれば朝型の推奨は正しいとは言い切れないかもしれない」

Dさんのクレームに回答する術がみつからなくなりました。会社はDさんの仕事ぶりを個別に分析。仕事に対する集中力や時間管理に対する意識の高さが好業績の要因であることがわかりました。単に朝型にすればいいという判断は安直であったかもしれない……と大いに反省することになりました。さらに

「Dさんを含めて、業績の高い社員と勤務時間の相関関係を当初から分析していれば、成果につながる取り組みを講じられたのに」

と後悔が生まれました。結果として朝型の施策は強く打ち出されないようになりました。すると早朝は静寂な時間帯へと戻っていきました。Dさんは集中できる空間を再び得ることができ、クレームを撤回したようです。

さて、朝型で仕事をすることが悪いわけではありません。ただ、1人の社員が朝型で活躍しているから全社員も朝型にすれば同様な成果につながるというのは安直ということなのです。

打ち手を講じる前にデータを分析してエビデンスを導き出すことをすれば、もっと成果につながるのではないでしょうか。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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