「ウチの子はダメ」と嘆く親ができてない基本 他人と向き合ったところで何も解決しない
石井:子どもたちはもともと「できない」ので、最初から「できる」とは思わずに、段階を踏んで一つひとつできるように導いてあげる、ということですね。
松岡:指導はどんなところから始めるのでしょうか。
石井:靴を脱いだらそろえる、人から話しかけられたら返事をする、といった生きていくうえで基本的なことが、日々の生活のなかでたくさんありますよね。まずはそういう根っこの部分を作ることから始めます。本来は親の務めだと思いますが、家庭ではうまくいかないことが多いですよね。それを教室で「できるまで繰り返す」ということです。
松岡:親と先生との違いがあるのでしょうが、「教室などではきちんとやっているようなのに、家ではやらない」ということも多いのではないでしょうか。
石井:教室で何を学んできたか、親がきちんとチェックをすることですね。「教室に任せているから安心」ではなくて、何をどう指導されているのか理解しておくことが必要です。そして、うまくできないことは家で繰り返し練習する。幼いうちは本人任せにはできないですから。
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松岡:これからの時代、子どもや家族とのかかわり方を変えていかなければいけないのは、特に男性の側だと思います。「勝手に育つ」といわれた時代と違い、父親の手助けがとても大きな力になる。僕もいろいろ勉強させてもらったので、やればやるほどよくなるのがわかるんです。でも基本的に「ダメおやじ」なんで、できていないことも多いのですが。
石井:父親がかかわるといっても、どうしても限界がありますからね。
松岡:昔だったら父親が家にいないのが当たり前でしたからね。僕の父もそうでしたが、コミュニケーションはうまくいってたんです。父親が嫌いになったり、反抗したりすることもなかったですし、大きくなっても、友達よりも家族と一緒にいるほうを僕は選んできました。
自分が家族を作るときもこうあってほしいし、できると思っていましたが、なかなか難しいものですね。
石井:やはり、何よりもコミュニケーションが基本ということでしょうね。私の教室では、コミュニケーション力を養うために、公園の真ん中で1人ずつ立って、自分や家族のことを5分間かけて話すスピーチの練習をするんです。
松岡:1人で5分間も? 幼い子どもにとっては大変なことですよね。
石井:最初は私からいろいろと質問します。「あなたのお名前は?」からはじめて、家族のことなどを聞き、細切れの受け答えをつなげて「こんなふうに話してみようか」とスピーチの内容を構成していくのです。
すると、だんだんと自信をもって話せるようになって、入試前の10月ごろには5分間のスピーチができるようになります。