鉄道会社がアリタリアに買収提案をした事情 フラッグキャリアが「旧国鉄」の傘下に?

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こうした紆余曲折を経て、同国政府は今年10月末を期限としてアリタリア救済に向けた入札を募った。その結果、これまでに2社が「法的拘束力のある買収提案」を提出、1社が「買収に向けての関心を表明」したと報じられている。

その2社のうち、1社はアリタリアと同じ航空同盟(アライアンス)の「スカイチーム」に属する米デルタ航空、もう1社がFSだった。

FSは10月30日、役員会でアリタリアに対し買収提案することを承認したとのリリースを発表。これにより「国を代表する鉄道会社が、同じ国の代表的な航空会社を傘下に収める」という、ほぼ前例のない買収の可能性が生まれることになった。ただ、FSは買収提案は出したものの、それ以上の概要は明らかにしていない。

イタリアのディマイオ副首相は、アリタリアの未来について「フラッグキャリアとして、復活ではなく再興させる」と述べており、新しい大株主とともに政府も15%程度を出資する考えを明らかにしている。

ドル箱路線は航空と競合

イタリア国内の長距離ルートを眺めてみると、国土をちょうど縦断するように、ミラノ―ローマ―ナポリ間を高速列車が行き交っている。もちろんこれ以外の高速鉄道網もあるが、なんといっても首都ローマと北部の商都・ミラノを結ぶルートがいわゆるドル箱路線だ。

両市の中心駅間の距離は568km。かつて在来線で6時間以上かかっていたこの区間は、現在ではFS傘下の旅客列車オペレーターであるトレニタリアが運行する高速列車「フレッチャロッサ」ETR1000が最短2時間55分で結んでいる。

だが、最速の列車は利用者の多い途中のフィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ(SMN)駅に立ち寄らずノンストップで運行する。同駅は「行き止まり式ホーム」のためスイッチバックが必要となり、しかもホームへの入線時に駅の手前で待たされるという問題があるためだ。

ETR1000の営業最高速度は、現状では時速300kmに抑えられている。「車両の性能的にはさらに速く走れる。そうしたら航空機から移ってくる旅客シェアをがっちり鉄道が押さえられるのだが……」。本来は時速360kmで走れるETR1000の生産を旧アンサルドブレダから引き継いだ、日立レールイタリアのジュゼッペ・マリーノCOOは以前、筆者に熱く語った。

せっかく欧州最高速の列車を生み出したのに、なぜその性能を活かせないでいるのだろうか。以前、イタリア鉄道界の関係者数人にこの件について質問してみたことがある。

その答えを総合すると「高速運転を実現するには線路の路盤を強固にするとか、線形の工夫が必要なことも確かだが、最も大きな問題は政府に『航空会社(つまりアリタリア)を潰せない』という力が働いている疑念がある」からだという。

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