速いけど不便?香港-中国「高速鉄道」の実情 開業1カ月、現地在住者は「在来線で十分」
中国政府は香港とマカオ、そして本土の広東省の連携を強め、一つの経済圏として開発する「粤港澳大湾区」(グレーターベイエリア)構想を推し進めている。
10月24日、香港とマカオ、中国本土の珠海(広東省)を結ぶ世界最長の海上橋「港珠澳大橋」が開通した。橋と一部の海底トンネルを含む全長は約55km。これまでフェリーで約1時間を要した香港―マカオ間は約30分、陸路で4時間かかった珠海までは約40分に短縮される。
この大橋開通に先立ち、9月23日には中国の高速鉄道網がついに香港まで拡大され、鉄道による本土との結びつきも強化された。今回開通した区間は約26kmで、2万5000kmに及ぶ中国高速鉄道の全体規模から見ればわずかな距離だが「一国二制度」をうたう香港の地と中国各地がつながることは大きな変化だ。
だが、一方で在来線を走る直通列車もそのまま維持され、各駅停車で「国境」まで行くルートも引き続き利用されている。ビジネスパーソンからは、高速鉄道より在来線のほうが便利……との声も聞かれる。
香港を取り巻く交通事情が変化する中、高速鉄道の開通で鉄道の現状はどうなっているのか。改めて追ってみた。
香港の地下に「中国の駅」が
香港の高速鉄道のターミナルは、新たに建設された西九龍駅だ。同駅は、分かりやすく言うと「香港の繁華街の地下に中国本土の駅を作った」という体裁となっている。西九龍駅のホームに入るには、出発コンコースで香港から出るためのパスポートチェック(出境審査)を経た後、中国本土に入るための入境審査を受ける。この手続きを経てようやく列車へと乗り込むことができる。
ただ、このパスポート審査やセキュリティチェックを受ける都合で、乗車する列車の出発45分前には改札を通過しなければならない。高速化により移動の時間自体は短縮されたが、早めに駅に行って手続きを受ける必要がある。
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