会社員より自営業が「金銭的にトク」は本当か シビアに見極めたい「お金の損得」

拡大
縮小

不安定という要素もあります。今月はうまくいっても、来月はどうなるかわからない。仮に独立時にうまくいっても、いつまで同じように稼げるかはわかりません。10年後、20年後も同様の収入を得られるとは限らないわけです。

業種などにもよりますが、仕入れや店舗家賃、業務の維持費などの経費を差し引いた分が所得になると考えると、一般的には会社員時代の給与より2〜3倍の売り上げがないと厳しいと考えたほうがよいでしょう。

収入と所得は意味合いが違います。収入はサラリーマンで言えば給料、自営業で言えば売り上げになりますが、それぞれ経費に該当する分が差し引かれたものが「所得」となります。その経費部分は、業種によって異なりますが自営の場合は全額自己負担となるので、サラリーマンの給与より多い金額を売り上げないと、厳しいのです。

税金・保険は、どっちがトクか?

税金の面で言うと、自営業者は経費にできる範囲が広いというおトクな面があります。自営業者が経費にできる範囲は、事業に使うための備品やパソコン関連だけでなく、仕事のために使った交通費、仕事相手と打ち合わせをしたときの飲み物代、仕事先の人への祝儀・お香典なども経費になります。

ですが、サラリーマンにも自営業者の必要経費に該当する「給与所得控除」というものがあります。具体的に「移動にいくら、スーツにいくら」という経費計上はサラリーマンにはしにくいものです。そういった「勤務にかかる経費」を収入額に合わせ、一律で引いてくれる仕組みです。つまり、給与収入額に対して、一定の経費額を自動計算して収入から引いてくれるのです。

どのくらい引いてくれるのかというと、収入が180万円以下の人は収入金額の40%、180万円超~360万円未満は、収入額の30%+18万円。360万円超~660万円未満の場合は、収入額の20%+54万円など、収入に応じた割合が決められています。

そのほか、特定支出控除というものもあります。これは、対象になる支出額と基準額の差額を、給与所得控除に追加して控除できる制度です。該当する支出は、

・転勤のために必要な転居のための支出
 ・単身赴任などの場合、勤務地と自宅の移動の経費
 ・職務に必要な技術や知識を得るための研修費・資格取得費

などの金額が控除の対象とされています。

会社が証明してくれれば、

・書籍など職務に関連するものを購入するための費用
 ・勤務場所で着用することが必要な衣服を購入するための費用
 ・得意先などに接待・供応・贈答をした費用

も控除される可能性があります。

基準額は、年収1500万円以下の人は給与所得控除額の半分。つまり、年収500万円の人であれば、154万円の給与所得控除額の半分の77万円以上の該当支出がないと利用できません。そして、この支出は領収証など、必要支出であったことを証明する書類を添え、確定申告する必要もあります。

次ページ一概に「どちらが有利」と断言するのは難しい
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT