韓国紙も冷静に報じる「徴用工勝訴」の先行き

立ちふさがる「国家免除原則」のカベ

韓国大使に抗議する河野太郎外相(写真:REUTERS/Issei Kato)

日本の植民地時代に「徴用工」として強制的に労働を強いられて苦痛を受けたとして、日本企業を相手取り賠償を求めた原告に対し、韓国大法院(最高裁判所)は10月30日、被告である新日鉄住金の責任を認める判決を出した。

当記事は「ソウル新聞」掲載記事の日本語訳です(一部、理解を助けるための加筆をしています)

しかし、原告が実際に賠償を得られるか、あるいは日本軍慰安婦など植民地時代の問題に関するほかの訴訟にどのような影響を与えるのかは、現段階ではまだ未知数である。

大法院は被告である新日鉄住金に対し、原告4人に対して1人1億ウォン(約1000万円)の賠償を認める判決を出した。しかし、韓国の裁判所が日本にある新日鉄住金の資産や財産を強調執行することは原則的にできない。

その代わり、同社の韓国内にある資産に対する強制執行は可能だ。たとえば、同社はPOSCO株式(発行済み株式数の3.32%)を保有している。30日での株価で計算すれば、これは約7000億ウォン(約700億円)を上回る金額になる。

大法院の判決を元に、原告らが日本の裁判所に民事訴訟を提起する可能性もある。しかし2005年、今回と同じ原告が日本の裁判所で損害賠償請求を行ったものの、敗訴が確定している。そのため、日本の裁判所が今回の判決を認める可能性は低い。日本側がこの問題を国際司法裁判所に提訴、結論を遅らせる戦術を採る可能性もある。いずれにしろ、実際に日本企業に賠償金を支払わせることは容易ではない。

「国家免除原則」とは何か

ここで元従軍慰安婦がソウル中央地方裁判所に訴えた2つの裁判についても考えておこう。

日本政府を相手に訴訟を起こした元慰安婦のケースでは、国際司法裁判所の判例となっている「国家免除(主権免除、裁判権免除)原則」が適用される可能性も高い。国家免除原則とは、国際民事訴訟において被告が国やその下部にある行政組織の場合には、外国の裁判権から免除されるという、国際慣習法の一つだ。

イタリア人が1998年、「第二次世界大戦中にドイツ軍から徴用されて強制的に働かされた」としてドイツ政府に賠償を求める裁判を起こした時、イタリアの破毀院(はきいん、最高裁判所に相当)は2004年に「賠償すべき」との判決を下した(「フェリーニ事件」)。ドイツ政府はこれに反発し、「すでにドイツはイタリアに対し賠償義務を履行しており、イタリアの裁判所がドイツの主権を侵害している」と主張した。ドイツからの提訴でこの事件を審理した国際司法裁判所は、国家免除原則を適用してドイツ側の訴えを認めている。

韓国・高麗大学法学専門大学院のカン・ビョングン教授は「慰安婦問題であれ強制徴用の問題であれ、どちらも問題としては似たような行為の責任を問うもの。被害者の損害賠償請求権は国家を相手に行使できないという原則は変わらない。フェリーニ事件において国際司法裁判所は、ドイツの不法行為を審理したわけではなく、国家免除原則があることを再確認した」と説明する。

元慰安婦らが2016年にソウル中央地方裁判所で提訴した2つの訴訟に対し、日本政府は「無対応」中だ。裁判所関係者は「日本の外務省に書類を送っても返送されて戻ってくる。被告(日本政府)への送付がなされず、正式な裁判は一度も開かれていない」と言う。

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