HDDは赤字続き それでも強気の日立・古川社長
見えてこない黒字化策
財務担当トップの中村豊明専務は5月16日の決算発表で「HDD事業は07年度も330億円の営業赤字」と早々に白旗を揚げていた。それが、方針説明会では、生産拠点の集約や400人の間接人員削減などの追加施策を示すことで、古川社長自らが一転して黒字化を公約した。
「意気込みはわかったが、抜本策が見えてこない」。方針説明会の場で古川社長に質問したゴールドマン・サックス証券の松橋郁夫アナリストは首をかしげる。「四半期換算でわずか2000万ドルのコスト削減効果しかない。第1四半期の赤字1億5000万ドルを改善させる決め手にはなりえない」。黒字化の可能性は低いという見方だ。
市場調査会社、テクノ・システム・リサーチ(TSR)によれば、他のHDD勢の今年1~3月期は、日立以外は黒字だった。世界最大手の米シーゲイトが2億ドル台、2位の米ウエスタンデジタルが1億ドル台の営業黒字。日立より下位の韓国サムスン電子、東芝、富士通もそれぞれ1000万ドル台の部門黒字を確保した。3位の日立だけが大赤字なのは奇異。日立本体の経営幹部はHGSTが赤字に陥るたびに、「同業大手に価格攻勢を仕掛けられたから」と説明してきた。今回もそうだが、赤字の真因はHGSTの高コスト体質にある。
TSRの馬籠敏夫シニア・ディレクターによれば、「IBMから買収する以前の日立のHDDは利益が出ていた。それがIBMの高賃金社員を抱えてコスト高になった」。
HGSTは、開発から生産、販売までを自前で手掛ける垂直統合型モデルだ。「部品を内製化することでコストが下がるのが普通だが、コスト高のHGSTでは逆に外注したほうが安くつく場合が少なくない。シンガポール、タイ、中国、フィリピン、米サンノゼと世界各地に分散する拠点が一元管理されておらず、開発・生産・営業が一体で運営されていない」(馬籠氏)。
方針説明会の後、報道陣に囲まれた古川社長は「HDDはオセロのような業界でバタバタバタっと(世界シェアが)変わる可能性がある」と言い、世界的な再編劇では「(買う側に回るなど)いろいろなことがありうる」と余裕の笑みすら浮かべた。なおも詰め寄られて「黒字化できなければ、撤退、売却、他社の資本参加などもありうる」とも語ったが、あくまでも07年度黒字化を信じて疑わない様子。どこまで強気を押し通すことができるか。
(撮影:今井康一)
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