韓国「徴用工勝訴」が日本に与える巨大衝撃 戦後体制そのものを揺るがすパンドラの箱だ
そうした中、元徴用工が、2000年5月に三菱重工業、2005年2月に新日本製鉄(現新日鉄住金)を相手取って提訴しました(三菱広島プサン訴訟・旧日本製鉄大阪ソウル訴訟)。今回の判決につながる訴訟です。一審ニ審ではいずれも原告が敗訴しますが、2012年に韓国大法院が驚きの決定を行います。
その論旨を簡潔にまとめると次の4点です
といった内容のものでした。30日の大法院判決も基本的に同旨となっています。
ここで重要なのは、今回認められた反人道的な植民地支配に基づく慰謝料請求は、そもそも日韓請求権協定の対象となっていた未収金や補償金とはまったく別の請求権であるという点です。「そもそも日本の植民地支配はまったく違法なものなのだから、それに基づく補償問題については、日韓両国は一切合意していない」ということを言っているわけです。日本側はそれも含めて完全かつ最終的に解決したと思っているわけですから、「話が違う」となってしまいます。
そして、大法院判決の論旨は、2005年の民官共同委員会見解とも合致しておらず、日韓両国政府におけるこれまでの法解釈から大きく逸脱したものとなっていました。
あまりに横暴と言わざるをえない
上述の通り、日韓請求権協定に関する日本側の解釈も決して一貫していたとはいえないことは確かです。「サンフランシスコ条約枠組み論」も純粋な法理論というよりも、多分に政治的な妥協の産物としての色合いが強いと言えるでしょう。
しかし、たとえそうであったとしても、すでに戦後賠償については、サンフランシスコ平和条約を含む一連の条約によって解決済みであるという前提に立って各国の国際関係が成り立っているところに、50年以上も経った今となって、「日本はそもそも違法な植民地支配の賠償を行っていない」として、これまでに積み上げられた政治的合意の土台を根底から覆してしまうことは、あまりに横暴と言わざるを得ないでしょう。講和とは何だったのかという話にもなります。
今回の韓国大法院判決は、日韓関係の基礎となる1965年体制、ひいては現在の国際社会の基礎であるサンフランシスコ体制を根幹から揺るがすものとなりかねません。その意味で、まさにパンドラの箱を開けてしまったと言えるでしょう。
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